矢野桂一

2022年02月08日

音楽と融合するプログラム




今日はいよいよSP本番の日ですね。

昨日の公式練習でのジャンプを観た後なので、4S・4T‐3T・3A というジャンプ構成には何の心配もなさそうですが、それでも国際試合での初披露ですからドキドキが止まりません。


羽生選手のプログラムの特徴として、音楽との融合というのは、とても大きなテーマかと思います。

音楽が単にジャンプやスピンのバックグラウンドミュージックのようなものになっている場合も多々見かけるので、羽生選手の音楽の突き詰め方と、それに合わせた音楽表現が突出しているように感じます。


SPの前に、Number1045冬季オリンピック開幕直前特集「北京に跳べ」の中の、音響デザイナーの矢野桂一さんの解説を読み返しました。

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今シーズンのショートプログラムについて、羽生選手から最初に連絡が入ったのは昨年8月のことだったそうです。清塚さんが演奏した『序奏とロンド・カプリチオーソ』が送られてきました。

曲の出だしは原曲どうりピアニッシモでしたが、羽生選手は曲の出だしとしては小さすぎるのではないかと聞いてきたそうです。

矢野さんは曲の出だしであっても、メゾピアノかピアノくらいで弾き始めてもらったらどうだろうということを提案し、あえて矢野さんが曲を編集するのではなく、清塚さんにもう一度弾いてもらうことになったということです。

そして9月末ごろに今の新バージョンが出来上がりました。

その時点でも、矢野さんはジャンプを跳ぶ場面も気になっていて、前半の音を押さえた部分で、ジャンプの後に拍手で音が聞こえなくなるのではないかと思ったそうです。
しかし、羽生選手は以前から「始まりの音を聞けばあとは頭の中で鳴っていて、身体が勝手に覚えているから大丈夫です」と言っていて、そのバージョンで行くことになりました。

矢野さんが最初に演技を観たのは全日本選手権の公式練習で、ぴったりと音に会った音ハメの凄さを感じたそうです。「エレメンツ一つ一つが音の表現に合っていて、一つの音楽としても完成している印象でした」と語っています。

矢野さんによれば、清原さんの演奏には独特な揺れがあり、でも今回の羽生選手はそれを心地よい揺れとして捉え、自分の演技をそれに合わせている。多分それはアイスショーで二人が共鳴してきた経験がベースになっているのだろうと感じているのだそうです。


「羽生選手と清塚さんが、それぞれの解釈を持った上で、歩み寄ってこの作品を完成させています。全日本選手権での演技では、羽生選手と清塚さんの呼吸が一体化しているのを感じました」という矢野さんの感想には、全くその通りだったなと思いました。


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サン・サーンスと清塚さんと羽生選手のコラボレーション作品「序奏とロンド・カプリチオーソ」は、今日の北京オリンピックのリンクでは一層完成度が上がっているのではないかと、期待でいっぱいです。


羽生選手は今朝の公式練習で、初めてメインリンクで滑ります。
公式練習は、08:50~09:20
演技は、13:19からです。


北京の青いリンクに青い衣装が映えるでしょうね。

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ドキドキと同時にワクワクしています。



昨日の公式練習での美しい写真の数々、若杉さんありがとうございます。

22 北京 公式練習 若杉 7日

22 北京 公式練習 7日 若杉 2

読売新聞北京オリンピック写真速報(羽生結弦)




22 北京 公式練習

マスク外す姿さえ美しい。王者の貫禄さえ感じます。

今、午前5時30分。公式練習まであと3時間。

結弦くんはもう起きているかな。



お読みいただきありがとうございました。

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2021年01月25日

冨田勲さんの音楽と矢野桂一さんの編曲と




羽生選手のフリーの新プログラム「天と地と」は、1969年のNHK大河ドラマ「天と地と」、
そして1972年のNHK大河ドラマ「新・平家物語」の音楽を編集したものになっています。

この2つのテーマ曲を作曲したのが冨田勲さんです。

これが冨田さんの曲だと知った時、私はちょっと意外な感じがしました。

冨田勲さんと言えば、私の中ではシンセサイザー音楽の作曲家というイメージがあったからです。


調べて驚いたのですが、冨田さんは大河ドラマの音楽を多数担当されていたのです。

NHK大河ドラマ

  • 大河ドラマ第1作:花の生涯(1963年)
  • 大河ドラマ第7作:天と地と(1969年)※ 初のカラー大河ドラマ
  • 大河ドラマ第10作:新・平家物語(1972年)
  • 大河ドラマ第12作:勝海舟(1974年)
  • 大河ドラマ第21作:徳川家康(1983年)


その他にも、映画、ドラマ、アニメ、校歌、CMと、ありとあらゆるジャンルの、数えきれないほどの音楽を手掛けた多作の作曲家でした。


以下、ウィキペディアから経歴のほんの一部をご紹介します。


やがて古典的な「アコースティック楽器の
オーケストラ」の音には飽きたらなくなり、当時新たに登場してきた電子機器と古典的楽器の音を融合させるなど、様々な音楽の可能性を追求するようになった。さらにその後1969年に電子楽器モーグ・シンセサイザーに出会ったことが転機となり、これ以降は古典的名曲を現代的な解釈を加えて編曲し、自宅スタジオでシンセサイザーを演奏・多重録音して作品を制作し世に発表することが活動の中心となった。その音楽や音響効果は「TOMITA SOUND トミタ・サウンド」と呼ばれ、「Isao TOMITA イサオ・トミタ」の名は広く世界に知られている。

1971年秋頃、モジュラー式のモーグ・シンセサイザー(モーグIII-P画像)を日本で初めて個人輸入した。非常に高額な楽器であり、金銭面で苦労したという。

1975年3月開催の第17回グラミー賞において日本人として初めてノミネートされた[11]。この快挙はNHKなど国内のマスコミによっても報じられ、米国RCAレーベルのレコードが国内に(『月の光 - ドビッシーによるメルヘンの世界』として)逆輸入されたことなどにより、その作品が知られるようになった。またNARM(National Association Of Record Merchandiserers 全米レコード販売者協会)の1974年最優秀クラシカル・レコードにも選ばれた。

1975年2月発表の『展覧会の絵[12]は、1975年8月16日付けのビルボード・キャッシュボックスの全米クラシックチャートの第1位を獲得し、1975年NARM同部門最優秀レコード2年連続受賞、1975年度日本レコード大賞・企画賞を受賞した。

同年9月発表の『火の鳥[13]は1976年3月20日付けのビルボード全米クラシックチャート第5位を記録した。

1976年12月20日発表の『惑星[14]も1978年2月19日付けのビルボード全米クラシック部門で第1位にランキングされた[15]。『バミューダ・トライアングル』では発売翌年のグラミー賞で "Best Engineered Recording"に2回目のノミネートを受けた。1983年のアルバム『大峡谷』では3回目のグラミー賞のノミネートを受けた。以降『バッハ・ファンタジー』(1996年)まで、冨田勲のアルバムはいずれも世界的なヒットを記録している。

1979年に米コンテンポラリー・キーボード誌の読者投票により“ベスト・スタジオ・シンセシスト”に選ばれた。冨田のシンセサイザー作品群は、全ての音色作りはもちろん、全パートの演奏、録音、編集までを含めて冨田自身の一人の手による制作であり、現在のパーソナルスタジオによる音楽制作の先駆けであったといえる。

ここで教えを受けながら助手として働いた松武秀樹は、後にイエロー・マジック・オーケストラの第4のメンバーとしてシンセサイザー・マニピュレーターの役割に就いた。海外では、スティービー・ワンダーが、来日した際に最も尊敬している音楽家として冨田の名前を挙げている(後に長良川でのサウンドクラウドに登場している)。マイケル・ジャクソンも、来日(1987年9月24日)の際に冨田のスタジオを訪問した[16]。また『惑星』の立体音響に深く感銘したフランシス・フォード・コッポラ監督は、映画『地獄の黙示録』の音楽を冨田に要請したが、レコード会社との専属契約の関係で実現には至らなかったとされる。


1998年日本の伝統楽器と西洋オーケストラとシンセサイザーによる『源氏物語幻想交響絵巻』を作曲。東京、ロサンゼルスロンドンで初演、自ら指揮棒を振った。1999年、メディア・アーティスト協会創設に参加。

2001年、東映50周年記念作品映画『千年の恋 ひかる源氏物語』の音楽を作曲し、日本アカデミー優秀音楽賞を受賞。また、東京ディズニーシー・アクアスフィアのための3面立体音響シンフォニーを手掛ける。


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このように、日本の伝統楽器とオーケストラとシンセサイザーの組み合わせによる作曲を多く手掛け、世界的にも非常に高く評価された作曲家でした。


羽生選手が新プログラムに冨田勲さんの曲を使うことについては、和楽器を使った曲でありながら、世界にアピールできる現代性を備えた素晴らしい選択だなぁと敬服しました。

また1969年と言う、羽生選手が生まれる25年も前のNHK大河ドラマの曲をよく見つけてきたものだなぁというのも驚きでした。

これも上杉謙信公との縁が引き寄せためぐり合わせなのかもしれませんね。


20 全日本 朝日新聞 7




Number1019号には、新プログラムの曲の編集を担当された矢野桂一 さんの記事が掲載されています。


琵琶の音色を付け加えたり、箏の音色にハープの音色を重ねたり、シンバルやチューブラーベルという楽器を使ったり、最後の部分は琵琶の音にエコーをかけて余韻を持たせるなど、音響デザイナーとして素晴らしい曲を作って下さいました。


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私事になりますが、私の母は子供のころから筝を習っていて、父は趣味で尺八を吹いたりしていたのですが、ある時、なぜか突然、琵琶を買ってきたことがありました。

どこかで琵琶法師の音楽を聴いて、えらく気に入ったらしいのです。

そんなわけで、私も子供のころから筝、琵琶、尺八という和楽器は身近にあったので、今回の音楽は非常に気に入っています。

琵琶はリュートと、箏はハープと似ています。
楽器を通しても、世界の中の日本、日本の中の世界を感じたりします。


和楽器って、西洋の楽器とは音階が違うので、扱い方によっては現代音楽のようにも聞こえたり、ジャズ風な趣も感じられたりして。

羽生選手の『天と地と』をきっかけにして、世界にもっと和楽器の素晴らしさが広がって行ったらいいなと思っています。


20 全日本 朝日新聞 6

結局、この曲を選んだ羽生選手の音楽的センスが素晴らしいということ。



最後までお読みいただきありがとうございました。

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2020年01月10日

音響デザイナーと衣装デザイナー



羽生結弦プログラムコンサートガイドブックが素晴しくて、繰り返し読んでしまいます。


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これは正にプログラムと共に生きてきた羽生結弦アルバムです。


各プログラムのページには羽生選手自身のそのプログラムに対する思いと、振付を担当した先生方のコメント入りになっています。

幼いころから順番に、山田真実コーチ、都築章一郎コーチ、関徳武コーチ、そして圧倒的に多くのプログラムを振付した阿部奈々美コーチは振り付けた全てのプログラムについての解説を寄せてくれています。

クリケットクラブに移ってからの振付は、SPはジェフリー・バトルさん、FSはデイヴィッド・ウィルソンさんとシェイ=リーン・ボーンさん、そしてNotte Stellata を贈ってくれたタラソワさんからのコメントもあります。

写真もアルバムのように、大きなもの、小さなものを織り交ぜてたっぷり掲載されています。


特別記事も2本あり、一つは音響デザイナーの矢野桂一さん、もう一つは衣装デザイナーの伊藤聡美さんです。

ー矢野桂一が語る、羽生結弦の「音楽」ー

矢野さんと羽生選手との最初のかかわりは、ソチ五輪の時の『ロミオとジュリエット』の曲の中のちょっとしたノイズを取ってほしいという依頼から始まったそうです。

矢野桂一
VICTORY記事より 矢野桂一さんと羽生選手


次の機会は『SEIMEI』の時で、矢野さんが『陰陽師』と『陰陽師Ⅱ』のサウンドトラックの曲を聴いて4分40秒ほどにしたものを作ったそうです。
「その時点ではどこでジャンプを跳ぶかなどは決まっていません。ですから彼のスケーティングやこの曲で滑る彼を想像しながら、最後を盛り上げたいという音楽的視点も持ちつつ1つの形にした」ということです。

その後の修正作業も圧倒的に多く、1か月ちょっとの間に33バージョンくらい作って、あの『SEIMEI』の音源が出来上がったそうです。最後に付け加えたのが、曲の最初の息の音で、これはもうよく知られていますが、羽生選手自身がスマホで録音したものを加工して冒頭に入れたのだそうです。

『SEIMEI』の曲は矢野さんと羽生選手の共作とも言えるものだと思いました。


矢野桂一 getty



『SEIMEI』の音源のできるまでがよくわかり、矢野さんのようなプロフェッショナルが羽生選手のこだわりの音楽を支えてくれていることに頼もしさを感じました。

因みに今シーズンのOtonalとOriginの曲も矢野さんの編集だということです。


矢野さんから見ても、羽生選手は「すごく耳がいいんです」とのことです。



もう一つの記事は衣装デザイナーの伊藤聡美さん

ー伊藤聡美が語る、羽生結弦の「衣装」ー

今や羽生選手のプログラムに伊藤さんの衣装は欠かせないものになっていますね。
私も一度だけですが伊藤さんの講座に参加させていただいたことがあります。


伊藤さんが初めて羽生選手の衣装を手掛けたのは2014-2015シーズンのEXプログラム
『Final Time Traveler』でした。

蒼い炎 Ⅱ



そして次があの2014年中国杯の後の2着目のブルーバージョンの『オペラ座の怪人』です。
2週間でデザイン製作し、ギリギリでNHK杯のあった大阪に届けたそうです。
届けた後は大阪の路上でドッと発熱したそうで、そのくらい短時間に根を詰めて製作して下さったのでしょう。

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2週間であの完成度とは、伊藤さんの才能と実力は羽生選手にも確実に伝わったのだと思います。

その翌シーズンの『SEIMEI』から以降はほとんどが伊藤聡美さんデザインですね。

『Hope & Legacy』、『天と地のレクイエム』、『Notte Stellata』、『Otonal』、『Origin』、『春よ、来い』と続きます。


羽生選手は衣装に対する考えを初めから既に持っていることが多く、はっきりと希望を伝えてくることも多いそうです。
特に『SEIMEI』は「羽生さんがとても思い入れを持っていたので、ほぼ羽生さんデザインと言ってもいいと思います」とのことです。

今シーズンの『Otonal』と『Origin』は、「ジョニーさんとプルシェンコさんへのオマージュという意識でデザインした昨季に対して、今季はあくまでも羽生さんのプログラムという認識でデザインをしている」ということです。


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               ⇓               ⇓

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  より華やかに、よりエレガントに 



そして記事の最後はこのように締めくくられています。

「近年、シンプル化が進んでいる男子シングルの選手の中でも、「自分の世界観はこれ」と貫いている羽生さんの姿勢に、衣装屋としてやりがいを感じますし、「羽生結弦ってこれだ」というものを宣言するような気持で製作しています。羽生選手も見ている方々もがっかりさせないような衣装を、という思いでいますね」。

伊藤さんの衣装デザイナーとしての信念を感じる言葉です。


音楽と衣装は、フィギュアスケートを完成させるのに欠かせない重要なファクターです。
矢野桂一さん、伊藤聡美さんという本物のプロフェッショナルのサポートが本当に頼もしいと思える二つの記事でした。



ガイドブックは会場でも最終日には早々に売り切れになってしまい、入手できなかった方も多いと思いますが、幸い受注生産が決まりましたね。

羽生選手のファンであれば、絶対1冊は手元に置きたいガイドブック、と言うか、ガイドアルバムです。
是非是非ご購入をお勧めします。
MUST BUYです

Music with Wings  9



アクセルストアの購入申し込みはこちらです。

【受注期間】2020年1月16日(木)23:59まで。

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