川井郁子
2021年01月22日
アーティストが語る羽生結弦(1)
昨日発売のNumber1019号、読みどころがいっぱいで嬉しい悲鳴!
まず最初のページを開いて目に付いたのは、ここ。
写真が田中さんと能登さんという2大巨匠が一緒に担当しているところ。
田中さん@tanaka_nobu_ph と同じ媒体に提供できる機会がなかったので、なんか新鮮です🙇🏻 pic.twitter.com/PpSvOCRDow
— 能登 直 (@sunao_noto) January 21, 2021
ひとつの企画にお二人が一緒に写真提供するのは本当に珍しい気がします。
初出と思われる写真もありました。
記事も、出版まで1か月という短い期間に、多岐にわたるジャンルの方々から集められていて、
集英社という大出版社の底力でしょうか。
どの記事も読みごたえがありすぎて、どこから書いていいのか迷いますが、
先ずは期待していたBooki in Book の記事から。
ジャンルの違う8人のアーティストの方々が羽生選手のプログラムについて語ります。
アーティストが語る羽生結弦 歴代プログラムの美
その中から、特に印象的なところ、共感したところを抜き書きさせていただきました。
今日は梅林茂さん、龍玄としさん、川井郁子さん、塩入俊哉さんです。
『SEIMEI』
梅林 茂 「内なる音に導かれて」
(映画『陰陽師』の音楽をプロデュースした作曲家)
「そこで羽生選手なのですが、なんとなくその拍子を捉えているのは凄いことです。言葉は悪いですが、この人はよくこの音楽のこのリズムなのに、ここで回転したり、跳んだり出来るものだなと。
どこでタイミングを合わせているのか。ビートの取り方と間の取り方。
ましてや下がスケート靴と氷なのだから、それはもう想像がつきません」
「今回こうして話をするにあたって、あらためて2015年と2018年の平昌五輪のふたつの演技を見ることになったのですが、音楽がどうとかの以前に、やはりこの人のスケートは凄い。他の曲を使ったとしても、同じような結果を残せたのではないでしょうか。
腰を低く氷上を撫でるように回るところなどは、誰が見ても感動するでしょうね。氷の肌を触っているような、大きな自分の地球を撫でているような……。
終盤、伸ばした足を広げTの字で何度も回転する。それが客席の壁の青い水平なラインと綺麗に水平になる。ただただ驚かされます。
また、体のフォルムが実に美しい。きっといい出会いをしているのでしょうね、氷と。
そういう気がします」

『オペラ座の怪人』
龍玄とし 「エンターティンメントの極意」
「羽生さんの『オペラ座の怪人』の演技で印象的なのは、前半の4回転トウループの着地と、象徴的な『ジャーン』の音とのタイミングが絶妙すぎる音ハメ。何度見ても思わず『うわーっ!』ってなります。
あの高度なジャンプをしながら、降りるタイミングを卓越したバランス感覚で瞬時に計算している。
イナバウアーのところの曲とのハマり具合も背筋がゾクゾクっとします。競技というよりも、”アイススケートバレエ”という新たな芸術作品を鑑賞しているような気持になります。
共演していても感じましたが、天性のものなのか、練習によって培われたものなのか、おそらくはその両方と思いますが、羽生さんのリズム感、リズムの刻みの感じ方は実に細かくて正確です。そのためにリズムに心身をはめ込む感覚に大きな余裕と自由さがあるので、音にぴたりとハマるのではないかと、勝手ながらですが推測しています。
またもうひとつ驚かされるのが、観衆を巻き込み、感動の渦を生み出す力です。
見て下さる方に対して何かを与えたい、伝えたい、力になりたい、メッセージを発したい、それが自分の喜びであり、ミッションなんだ、というような、羽生さんの生きる基本姿勢から発せられる力強いパワーが、それに共感する皆さんの思いと共に、エネルギーの渦となって増幅されて会場を満たす。
まさにエンターティンメントの極意を体現してくれるような、稀有なアーティストだと思っています。」
『ホワイト・レジェンド』
川井郁子 「祈りの舞は白鳥のよう」
「私が彼が優れた表現者だと思うのは、柔らかさと硬質なもの、熱いものとクールなものなど、両極を兼ね備えているところです。
ほとばしる情熱がありながらも常に冷静で、鋭さがありながらも優美さもある。
だからこそ音楽と深くマッチし、表現に奥深さが出ているのではないでしょうか。
それでも現状に満足せず、更に深い表現を模索し続ける姿は、クラシックの巨匠と言われる演奏家の精神性と通じるものがあると感じます」
「自分の曲をまったく異なる分野の方が表現することによって、化学反応が起きて昇華されるんです。
『ホワイト・レジェンド』は羽生選手によって翼を得て、高く高く飛翔したラッキーな楽曲でした」

『Hope & Legacy』
塩入俊哉 「2重力”さえ見せる演技」
「羽生選手の演技はこの和のタイム間を自然に表現している。一つ一つの動きに『重力』があるんです。たとえば冒頭、ピアノが16分音符を繰り返す音の中でスケーティングしながら腕を美しく動かしているのですが、ただ腕を出すだけでなく、タメを使い『重力』を表現している。そしてジャンプ、スピンといった動きのなかにも、内側から外側、外側から内側へと呼吸するような『エネルギーのやりとり』がある。吸っている息さえ、ひとつの音楽として表現されているのを感じます」
「この『Hope & Legacy』や『SEIMEI』といった和の音に対しては、自身のルーツである日本、アジアというものに向き合い、表現しようという気概を感じます。
2019年全日本選手権のエキシビションで演奏させていただきましたが、あの時の『SEIMEI』は神がかっていて、演奏していてゾクゾクしたほどでした。
実は前夜、プログラムを短くしたいということで急遽曲を編集したのですが、本番では全ての音に完璧に合わせていました」
4人の音楽家の方々全てが羽生選手の音に対する鋭い感性と理解の深さを語っています。
全てうなずけることばかりでした。
後半は次回の、アーティストが語る羽生結弦(2)に続きます。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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withgoldenwings at 06:47|Permalink
2020年01月09日
Continues with Music(2)
~Music with Wings~ の後半です。
(川井郁子さんブログより)
2部は羽生選手がトロントのクリケットクラブに移ってからのプログラムです。
先ずはパリの散歩道から。
13 パリの散歩道

黒のパリの散歩道はスケートアメリカかなと思いましたが、定かではありません。
映像はギタリストの背後にあるのに、音が映像にバッチリはまっていて、これは相当な練習を重ねられたのだということ感じました。

ヴィクトル・ユーゴー原作の『ノートルダム・ド・パリ』。
日本では『ノートルダムのせむし男』として知られている小説ですが、羽生選手の美しさにはやはり『ノートルダム・ド・パリ』のほうが似合いますよね。
15 『ロミオとジュリエット』より”愛のテーマ”
2013年の福岡GPFの映像に合わせたオーケストラの演奏でした。
ただただ美しかったです。
16 天と地のレクイエム
塩入俊哉さんによるピアノ演奏でした。
塩入さんは2015年にもレクイエムを生演奏して羽生選手とコラボレーションしたことがあるそうです。
羽生選手は「苦しみを乗り越えて進むというよりも、苦しみと共に歩んで行くという感覚がずっとある」と語っていたそうです。(暗闇の中のメモなので不正確かもしれません)
映像はありませんでしたが、塩入さんのピアノ演奏をじっくり聴かせていただきました。
17 Asian Dream Song & View of Silence
(Hope & Legacy)
久石譲さん作曲のAsian Dream Song を塩入さんのピアノとオーケストラでフル演奏です。
映像は無しでしたが、目を閉じればヘルシンキワールドの幻想的な姿がよみがえりました。
18 Notte Stellata(星降る夜)
テノール歌手、中鉢聡さんが登壇しました。
熱唱でした。
映像は無しでしたが、大大大好きなプログラムなので、聴いているだけで舞う姿が目に浮かびました。
19 ミュージカル『オペラ座の怪人』より
(オペラ座の怪人)
続いて中鉢聡さんによるボーカルとオーケストラ演奏で迫力のファントム。
2014年のバルセロナGPFの映像と共に。
大好きなプログラムと衣装、いつかまた是非滑ってほしい。
20 バラード第1番 ト短調 Op.23
(バラード第1番)

福間さんが渾身のバラード第1番を原曲で演奏して下さいました。
正装の福間さんがピアノに向かう時、静まり返る会場。
ここはショパンコンクールか?
という雰囲気でした。
映像は無くても、目を閉じれば羽生選手が舞っていました。
21 Otonal(秋によせて)
塩入さんのピアノとオーケストラによる原曲の演奏です。
映像はありませんが、曲の美しさを堪能しました。
22 Art on Ice & Music Stradivarius
(Origin)
エメラルドグリーンの華やかな衣装で川井郁子さん再び登場。
2019スケートカナダでの映像に合わせた演奏です。
羽生選手のヴァイオリン演奏の振付と川井さんのストラディヴァリウスの音がシンクロして、至福のOriginでした。
23 映画『陰陽師』『陰陽師Ⅱ』サウンドトラックより
(SEIMEI)

とうとう最後のプログラムになってしまいました。
2015年バルセロナGPFのノーミスの『SEIMEI』の映像。
そして100名のオーケストラと龍笛、尺八、箏、和太鼓のアンサンブルが凄い!
鳥肌が立ちました。
23曲が演奏されたあっという間の2時間半でした。
正直なところ、ここまで羽生選手のほば全てのプログラムをカバーしたコンサートだとは思っていませんでした。
羽生選手ほど音楽の選択ににこだわったスケーターは他にいないのではないでしょうか。
これまでもいなかったし、これからもいないでしょう。
スケーターによっては音楽は単にスケートのバックグラウンドミュージックのようであったり、また、なぜその曲を選んだのか理解できない選曲さえあります。
そんな中で羽生選手の音楽の選び方は本当に良く考えられているなあと思います。
羽生選手がまだ子供の頃は、コーチの先生方が羽生選手に合う音楽を真剣に考えて下さったこと。
そして羽生選手が自分で音楽を選ぶようになってからは、それにも増して音楽の選択に真剣に立ち向かったことが大きいと思います。
その結果がこのような素晴らしいプログラムコンサートを可能にしているわけです。
こんなことができるのは多くのフィギュアスケート選手の中でも羽生結弦選手だけでしょう。
羽生選手の選び抜いた曲に乗せたフィギュアスケートの中には物語があります。
ですから、彼がリンクに立つと、そこはディック・バトンさんが言うところの「劇場」になります。
それを見ている私達は、彼の物語の中に引き込まれ、いつの間にかそこに自分の物語さえ反映させるようになります。
人が芸術作品に感動するのは、その中に自分の感性と同質のものを感じる時だと言われることがあります。自分の中に既にあるものが、芸術によって触発されて現れてくる時、人は芸術と同化して、そこに感動が生まれるということでしょうか。
羽生選手の演技に感動する人は、どこか共通の感性を持っているということです。
ですから、私は何かのきっかけで同じく羽生選手のファンの方だと分かる時、その方に無条件で親近感を感じてしまうのです。
しかしまた、今回のようにプログラム曲を時系列で通して聴くと、なにか、一つの物語の完結の時が近づいているという実感も感じ、また涙が溢れてしまいます。
できることならずっと続いてほしいけれど。
長い準備期間を経て実現した羽生結弦プログラムコンサートを企画し実行して下さった皆様、
100名にも上るメンバーでスペシャルオーケストラを組んで下さった音楽家の皆様に、心から感謝いたします。
福間洸太朗さんTwitterより
「羽生結弦プログラムコンサート」にお越し下さった皆様、主催者様、スタッフの皆様、有難うございました!そして指揮の永峰さんはじめ出演された皆様、お疲れさまでした!#MusicwithWings pic.twitter.com/zcAzXCcEci
— Kotaro Fukuma/福間洸太朗 (@KotaroFukuma) January 7, 2020
川合郁子さんブログより(素敵なお写真たくさん)
塩入俊哉さんブログより
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