天と地と
2021年03月06日
『ウルトラマンガイア』と『ロシアより愛を込めて』
引き続き『Ice Jewels 』を読み返しています。
今日はスペシャルインタビューの『天と地と』のエピソードから。
羽生選手は、もうかなり前、SEIMEIの曲を見つけたシーズンから、大河ドラマのテーマ曲は色々聞いていたようです。
しかし、その時は選択肢とはならず、むしろ仙台の伊達政宗公を演じてみたいとは思っていたそうです。
今回この曲を見つけたのはむしろ偶然という要素が強く、
「自分が羽生結弦のままでいられるプログラムにしたい」と思う中でたどり着いたそうです。
「戦に身を投じることの葛藤や苦悩」という意味で、上杉謙信公と今の自分の気持ちに相通ずるものがあるのではないかと思ったのですね。
以前、お城が好きだと言っていたこともあるように、羽生選手は、意外と時代劇が好きなのかもしれませんね。
スタートポーズとフィニッシュポーズについてのエピソードでは、読んでいて思わず笑みが浮かんでしまいました。
シェリーン・ボーンさんの振り付けによる最初のスタート位置のポーズが、羽生選手の最初のプログラムである「ウルトラマン ガイア」と同じで、最後のポーズは元々は違うものになる予定だったのに、羽生選手の大切なプログラムで、都築先生振付の「ロシアより愛を込めて」の最後のポーズをアレンジしたものにしたのだということです。
この最後ポーズが「ロシアより愛を込めて」と同じだなというのは、割と直ぐに気が付いていましたが、本当にそうだったんだ~~と、納得しました。
しかもスタートポーズが「ウルトラマン ガイア」だったとは、驚きです!
「ウルトラマン ガイア」のスタートポーズの画像が見つからなかったのですが、
こんなポーズだったのでしょうか。
戦国武将の物語の中に、5歳の『ウルトラマンガイア』と9歳の『ロシアより愛を込めて』をそっと忍ばせてしまう、
そんな羽生選手のこだわりというか、遊び心が感じられて、とても楽しい気持ちなりました

シェイリーン・ボーンさんとオンラインで対話しながら、自分でもそこかしこにこだわりの振付を加えて創り上げたプログラムなのでしょうね。
こんな秘密(?)を明かしてくれるのも、スペシャルインタビューの楽しいところです。
明日から『震災と未来展』が始まりますね。
オンライン予約はこちらです。
羽生選手の『花は咲く』と『SEIMEI』の衣装も展示されます。
紫の背景に白い衣装が美しい。
これは必見ですね!
なるべく混雑しない日時を選んで、是非行ってみようと思います。
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2021年02月26日
マッシミリアーノさん解説『天と地と』
『氷上の創造者』に掲載された、マッシミリアーノ・アンベージさんの全日本解説は3ページに亘って羽生選手の演技について解説していて、最後のページではFSの『天と地と』について語られています。
一部抜粋させていただきました。
大勝利に終わった初披露
「全てのジャンプは極上のクオリティで実施され、全く力みを感じさせなかった。
余りにも簡単に実施されるエレメントの確固たる安定感が、高難度要素である全ての4回転ジャンプを極めて簡単なことのように見せていた。
羽生結弦は悠然とした佇まいの中で、同時にこの世のものとは思われないほど霊妙で、あらゆる動作が優美で、軽やかで、内面の平安が感じられた。
僅かな揺るぎもなく、演技開始と同時に楽曲『天と地と』の和の音色とそのストーリーに完全に同調しているように見えた」。
「これほど圧倒的な演技の後、私は個人的にまるで芸術作品を間近で鑑賞できる栄誉を味わったような、多大な幸福感を覚えた。
結弦の目標の一つは、希望のメッセージを吹き込むことだった。そしてこの目標は見事に達成された。
要約すると、『天と地と』の初披露は大勝利に終わった。
フィギュアスケートの唯一無二のチャンピオンの競技人生において、羽生結弦はまたしても傑作を実現してみせた」。
これほどまでに『天と地と』を美しい言葉で的確に捉えて表現してくれた解説者が他にいたでしょうか。
極めて日本的な曲と表現であっても、イタリア人であるマッシミリアーノさんは正確に理解して下さったことに感激しました。
優れた芸術作品は世界中どこでも通じる言語のようで、芸術を愛する人々の心には伝わっていくのです。
私は『天と地と』 というタイトルから想像すると、プログラムの表現は、地上の争いや戦いと、天上の平安を対比しているように感じます。
その衣装からは、鳥がさえずり花が咲き乱れる、上杉謙信公が深く帰依したという仏教の極楽浄土のイメージが湧いてきます。
最後のポーズは地上に生き、戦い続ける者からの、天上への憧れを表現しているのでしょうか。
『SEIMEI』の和のスピリットを引き継ぎながら、さらに哲学的な精神性を帯びたような、ひとつ大人な感覚の素晴らしいプログラム。
一度観ただけで虜になってしまいました。
またいつか観る機会がいつかありますように。
それが仮に今シーズンでなくても、私はいつまでも待っています。
こんなダイアリーがずっと欲しかった私は、実は毎年ダイアリーの表紙を自作していたんですよ!
これがあれば、今年はもう作らなくても大丈夫ですね

『ページをめくるごとに
— 田中宣明 たなかのぶあき (@tanaka_nobu_ph) February 25, 2021
ゆづと出会えるダイアリー』
ですって^ ^
さあて、
みなさんの誕生日のページには
どんな羽生結弦選手が。https://t.co/LHN1yOkiog pic.twitter.com/5hXNipl5jf
私の誕生日にはどんな結弦くんが現れるのかな?
それもとっても楽しみです!
そして『羽生結弦展 共に前へ』、仙台で無事開催されてよかった!
たくさんの方が見ることができますように。
明日から仙台で羽生結弦展が開催されます【仙台・宮城】 https://t.co/AjSJIeuYvH
— ねこまさむね【公式】 (@nekomasamunecom) February 25, 2021
仙台駅前の景色、懐かしいな。
いつかまた必ず行く場所。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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2021年02月22日
竹に二羽飛び雀
先日の記事に書いたように、
伊藤聡美さんデザインの今シーズンの羽生選手の衣装について書かれた『氷上の創造者』に掲載されたコラムを読んでいた流れで、
たまたま見つけたカート・ブラウニングさんの動画を観ていて、
史上初めて4回転ジャンプを跳んだ時のプログラムの冒頭のポーズが、羽生選手の『LMEY』のスタートポーズと同じだったのは本当に驚きでした。
たくさんの方があの記事を読んで下さったようで嬉しいです。
今日はその続きで、『天と地と』 の衣装製作のお話です。
ショートプログラムと同じく、フリーの『天と地と』についても、羽生選手ははっきりとしたイメージを持っていて、衣装の依頼を受けた時に使用曲と共に『天と地と』というタイトルも伝えられ、色彩とデザインについても、「ブルーグリーンを基調に、着物のイメージでお願いします」というリクエストがあったそうです。
着物の地の色がブルーのようにも、少しグリーンを帯びているようにも見えるのは、ブルーグリーン(緑選りの青)という微妙な色彩を羽生選手が求めていたからなのですね。
伊藤さんはリクエストを受けた後、上杉謙信について調べるために資料に当たっていく中で、上杉家の家紋である「竹に二羽飛び雀」に行きついたそうです。
そして、それをモチーフにしてアイデアを膨らませて行ったそうです。
ですから背中に向き合うように配置された二羽の鳥は雀なのですね。
花は何なのかについては明言されていませんでした。
桜のようでもあり、沙羅双樹という説もあり。
どちらにしても、人の世の儚さを思わせるような花なのです。
伊藤さんは、雀の周囲は「羽生さんのこだわりでもあり私のこだわりでもあるゴールドの刺繍にしました」とのことです。
金色の刺繍とビーズが華やかです。
華やかだけれど儚さも感じられて、どこか極楽浄土を感じさせるような美しさ。
衣装を観た時、直ぐに目に付くのが黒い帯ですが、これは男子の正装の時の袴の帯の結び方です。

羽生選手からは「袴のイメージ」という要望もあったようですが、流石に袴ではスケートは難しいですよね。
それで、少しでも袴のイメージを出すために、正装の結び方を模した帯にしたそうです。
伊藤さんは最後にこのように語っています。
「羽生さんはやっぱりイメージが膨らむ選手ですよね。羽生さんだからこそ、羽生さんじゃないと着ることができない衣装があると思いますし、何を着てもさまになるスケーターです」
これまでたくさんの羽生選手の衣装を手掛けてきた伊藤さんの中には、「こういう衣装を着てほしい」というイメージがたくさん湧いてきているのだと思います。
これからも是非、素敵な衣装をデザインして、羽生選手の多彩な魅力を引き出してほしいなと思います。
ポストカードブックも楽しみにしています。
今日は私のところにもスポニチの特大ポスターが届きました。
新聞紙を全面広げた大きなサイズです。
半艶仕上げのとても美しいポスターです。
早く額縁を用意しないと飾れない。
その前に飾る場所を確保するのが先決問題!
そして本日発売のSPUR4月号の織田さんの記事は、FODの雑誌読み放題で読むことができました。
Amazonでは売り切れになっていました。
織田信成の”ネコアシ解説” の第1回目は、昨年の全日本の羽生選手の演技について語っています。
FODに加入している方は是非お読みくださいね。204ページです。
今月からの新連載となっていますから、これから毎月織田さんの解説が読めるのが楽しみです。
今日も元気で練習できていますように。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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2021年02月05日
もう誰にも頼ることなく
もう昨日となってしまいましたが、来年2月4日は北京冬季オリンピックの開幕の日ですね。
果たしてその時が無事に迎えられのかどうか、まだ定かではありませんが。
オリンピックに関しては、”スポーツの祭典”と言われながら、実は政治的な、また昨今では商業的なイベントでもあるので、様々な思惑が絡んで純粋にスポーツの祭典とは言えないのが実情です。
昨日から、森喜朗氏の発言が日本はもとより、世界中でニュースとして取り上げられています。
昨日のニュース番組で発言の詳細を知り、呆れたというか、情けないというか、正直言って恥ずかしい気持ちになりました。
彼の中では当たり前のことと認識されていることを、そのまま言葉にしてしまったのでしょうね。
女性は分をわきまえて発言や意見の表明を控えるのが彼にとっては美徳なのでしょう。
一体いつの時代の常識なのでしょうか。
こういう方が東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会会長なのです。
日本の、東京の、オリンピックの、イメージダウン必至です。
私自身は野村萬斎さんが統括する開会式・閉会式の総合演出チームが解散された時点で、
電通による電通のためのオリンピックになってしまったということで、
もうこのオリパラ大会には全く興味を持てなくなってしまいました。
もしも野村萬斎さんが演出チームを統括していたら、羽生選手が絡んでくる場面もあったかもしれないけれど、今はもうその心配はしなくてもよくなっただけマシかなと思うことにします。

さて話は北京オリンピックに戻りますが、
昨年の全日本選手権で、4大陸選手権以来10か月振りに羽生選手の演技を見た時、
その完成度の高さと、何物にも動じないというようなオーラにあらためて心から驚きました。
その演技は、全日本がオリンピックであってもおかしくない程のものでした。
「一人で戦う覚悟と準備はできている」
羽生選手の姿から、そんな無言のメッセージが発せられているように感じました。
コーチ不在、リンクメイトもいない中、自ら振付しながらのたった一人での練習でよくあそこまで完成度を上げることができたなと感嘆しました。
どれだけの練習を重ねてきたかは、この動画を観るとよく分かります。
練習と本番の演技が、全く同じタイミングで同じ軌跡を描いていきます。
まるで筋肉が形状記憶装置を装着しているようです。
どこで、どんな状況で、どんな精神状態であれ、その演技は乱れることはない。
それくらい練り上げられたプログラムなのだと感じました。
羽生選手は、今まで北京オリンピックへの出場については明言はしていませんが、
出るならば勝つ、という準備は万端だと感じさせるものでした。
たとえそこにコーチの姿が無くても、振付師との細かいブラッシュアップが不可能でも、
もう誰にも頼ることなく、自分のためのスケートを貫くのだという、強い意志が見えました。
これからの1年間にどんなことがあっても、
そんな羽生選手を心から応援していこうという気持ちがさらに強く、大きくなった2月4日でした。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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2021年02月02日
スッと殺気が落ちていく感じ
今日は節分、明日は立春、
日に日に日差しの中に春を感じることも増えてきました。
しかし長時間の外出は控えているため、家の中で仕事や読書で過ごす時間が長くなります。
今日は『春よ、来い』が表紙のKISS &CRY の記事を読んでいました。
羽生選手のFS演技後インタビューから。
箏の音色を入れたことについて
「より日本風に持っていきたかったというのがあって。
あそこは自分の中では、信玄公と川中島で戦った後に、霧に包まれて離ればなれになって、自分と向き合っている時間みたいな感じなんで。
自分と向き合いながら、自分の鼓動が鳴っていることだとか、血が流れている感覚とか、スッと殺気が落ちていく感じが、感じられたらいいなと思います」
「スッと殺気が落ちていく」という表現は、自分が経験していないと、なかなか出てこないと思うのです。
羽生選手自身が、演技が終わった後に見せる表情と重なって、
ああ、彼は試合の時、本当に戦いの場に身を置いているのだな、という風に感じました。
そういう意味で、好敵手であった武田信玄公との戦いの中の上杉謙信公に自分を重ね合わせることは、彼にとって抵抗なく自然にできることなのかもしれないなと思ったのでした。
演技が終わった後も数秒間は「殺気」さえ感じる羽生選手が、スッと素に戻る時というのは、特に大きな試合の時には落差が大きいです。
過去にも何度も、殺気さえ感じる、そんな場面がありましたね。
羽生選手の中では、『天と地と』は戦いの中に生きた謙信公の物語でもあり、また自分自身の物語でもあるのだろうと思いました。
KISS & CRYの中で、もう一つ、小さなコラムが目に付きました。
『新人賞・三浦佳生 選手が語る羽生選手のすごさ』
全日本選手権初出場で7位となり、新人賞に輝いた15歳の三浦佳生選手のインタビューです。
ーどんな気持ちで演技に臨みましたか?
「やってやるぞ!」と言う気持ちと、「楽しんでやろう」という気持ち。
あとは羽生選手の演技を見て、羽生選手は常に集中していたので、見習おうと思いました。
ー羽生選手の存在は刺激になったということですか?
「昨日見ていて、あらためてすごいなぁって。ファンになりました。
ファンです、僕は(笑)」
―羽生選手の4回転の素晴らしいと思うところと、ご自身の素晴らしいところを教えてください。
「羽生選手は、高さ、幅、流れ、全部がピカイチ。僕は(羽生選手が)ナンバー1だと思っているので。お手本のようなジャンプで、僕は特にサルコウとルッツが好きです。ルッツは最後まで(エッジが)アウトになった状態で跳んでいて、あれこそが”教科書のようなジャンプ”。
僕のいいところは…勢い、スピードはあるほうだと思っています(照笑)。自爆することも多いので、もうちょっと改善していきたいと思っています(笑)」
羽生選手が全日本に初出場したのは2008年のことでした。
当時14歳で、初出場で8位という成績を残しています。
また一人、羽生選手の背中を追う後輩が頭角を現しました。
これからも注目していこうと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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2021年01月24日
歴史に残る名演技
全日本選手権から今日でちょうど1か月が経ちますね。
でもまだその余韻から抜け出せずに、毎日のように動画を観てしまいます。
Number1019号では、羽生選手の圧巻の演技について、様々なジャンルの方々から取材して下さっていて非常に興味深いですが、
全日本選手権で解説を担当し、フィギュアスケート選手として第一線で活躍された経験を持つ本田武史さんは、実際に自分が体験したことに基づいて鋭い指摘をされています。
技術的に一番変わったのはジャンプの空中姿勢での肘だということです。
「昨季まではちょっと肘が上がった状態でしたが、今季は肘を締めているんです。
本人に『軸が細くなったね』という話をしたら、『独りで練習しているからそういう所(外から見た姿勢)は分からない部分だった』と納得した様子でした。
軸が細くなった分、回転に余裕ができている印象でした」

問題のシットスピンのノーカンについては、本田さんはこのように話しています。
「これは全体的に、姿勢を変えるタイミングが早かった印象でした。1つの姿勢で『1,2』」と2回転数える前に、次の姿勢にむけて動き始めているので、回転数が足りないと判断されたのですね。本人も『ちょっと盛り上がり過ぎた』って言っていましたし、スピンの後の『拍手の部分がいらなかった~』とも。
あと1秒あれば回転は足りていましたからね。スピンのレベルは試合数をこなしながら調整するものなので、初戦の難しさでしょう」
拍手の部分とはここのことですね。

羽生選手は、会場をもっと盛り上げようという気持ちでここで拍手を入れたのだと思います。
しかし、もしそこまで厳しくスピンをカウントするならば、全選手に同じ基準を適用しなければなければなりません。
本田さんはさらに、「スピンの部分で4~5点は上がりますし、このプログラム自体は110点を超えるという予想ができます。このままで十分、北京五輪で勝てるプログラムになると思います」と語っています。
そしてフリープログラムのジャンプについては、
「全体的に軸が細く、やはり脇を締めています。個人的には最後のトリプルアクセルが一番のハイライト。スパイラルやってほとんどスピードのない所で高さと余裕のあるアクセル。お見事でした」

「軸が細く回転速度が速くなった分、開くタイミングを早めた。
これは4回転アクセルを早めに開くとトリプルになるという延長線上の練習をしていると感じました」
そして、
「このフリーは絶対に北京五輪へと繋がっていくでしょう」と言い切っています。
羽生選手自身は、北京五輪への思いは自分に封印していると言っていましたが、
実際問題として、このプログラムを見せられた後で、羽生選手が北京五輪を念頭に置いていないと思う人はいないのではないでしょうか。
同じく現役時代に第一線で活躍した中野友加里さんは、さらに熱く熱く、羽生選手のフリープログラムについて語っています。
「『天と地と』という名作は、歴史に残る名演技と言えるくらいの演技」
「一つ一つのジャンプが決まるごとに、もう呆然としてしまって、いやーこの人凄いな、この選手凄いな、と思いながら観ていました」
「一人異次元の戦いをしているんじゃないかというぐらい、素晴らしい卓越したスケーティング、そして歴史に残る、全日本の歴史に残る名演技だったんじゃないかというぐらい、素晴らしい演技でした」
「今日観た羽生選手の演技は、もう誰もかなわないんじゃないかなと思うくらい、世界でもトップになれるくらいの演技だったと思うので、この先どうなるかはわからないのですが、北京オリンピックに繋がる演技だと思います」
中野さんの感想は、羽生結弦ファンはもちろんのこと、たとえほかの選手のファンであっても、フィギュアスケートファンであるならば誰もが感じた事ではなかったでしょうか。
まだ世界選手権さえ開けるかどうか分かりませんし、世界中に変異種が拡散している最中に開催は難しいのかなとも思います。
しかし、たとえ次に演技を観るのが北京オリンピックになったとしても、
今回の演技を観る限り、羽生選手の3回目の五輪金メダルは非現実的なものではないと考えるようになりました。
それまで羽生選手が健康で、怪我無くいてくれますように。
祈るのはただそれだけです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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2021年01月21日
演技に酔う
集英社新書プラス
宇都宮直子 スケートを語る 第16回 唯一無二 より一部抜粋させていただきました。
さて、私の見た「全日本選手権での羽生結弦」だが、別の次元で生きている人のようだった。
羽生は、
「自分が出場したことで、ちょっとでも何かの活力になれば。なんかの気持ちの変わるきっかけになれば」
と語っているが、私は、あらためて彼が唯一無二の選手なのを感じる。
羽生の発するエネルギーは、独特だ。
人の心を束にして、一瞬で持って行く。人々はそれに抗えないのである。
私は一昨年、心臓に不調を抱え、試合に行けなかった。ために、羽生を見るのは久しぶりだった。
演技中は、何も思えなかった。過去、タチアナ・タラソワコーチが話していた状態だったのだと思う。
曰く、
「私は完全に、羽生に魅了されています。まるで麻酔をかけられたように、身動きが取れないのです。
食い入るように見つめるしかない。私にとって、彼はそんな存在です」
「天と地と」の演技後、私は隣席に座る編集者に言った。
「今日はとても幸せ」
ほんとうに、そんな気分だった。羽生結弦のいるリンクのなんと豪華なことか。
ビッグハットは、新型コロナ感染症の対策が成されていた。個人的には、NHK杯(大阪)よりもきちんとしていた気がする。消毒液が至る所に置かれていた。
会場は集客が抑えられていたが、雰囲気がよかった。優しかったと思う。
登場するすべての選手に、惜しみない拍手が贈られた。バナー掲出は許されていなかったが、客席のあらゆるところで静かに、思いを込めて振られていた。
ショートの6分間練習の際、羽生が何かを短く言うのが聞こえた。
普段耳にする、あの柔らかい声ではなくて、腹の底から出たとでも言うのだろうか。野太い声だった。
フリーの6分間練習のときもそうだ。
手を顔に近づけて、指先を見ながら小さく笑った。それから何かを言った。野太い声ではなく、普段の声で、である。
私には聞き取れなかったが、編集者によれば、
「『鼻血が出た』って言っていませんでした?」
ということだった。
確認は取れていないが、そういう場面がたしかにあった。
私は会場で、いつもと同じようにメモを取った。長い歳月、ずっとそうしてきた。でも今回、初めてのこともした。
ノートに、私はこう綴っている。少し乱れた字で、
「高山さん、あなたの愛した羽生はこんなにも綺麗です」。
高山さんがもし羽生選手の『天と地と』を観たら、どんなことを語ったでしょうか。
美しいものを愛した高山さんは、宇都宮さんの隣で、「僕もとても幸せ」と微笑んだ、或いは泣いたに違いないと思いました。
私は羽生選手の演技を観る時、馥郁たるかおりを放ちながら、淡い金色の液体の中に細かい泡がいつまでも立ち上がってくる、最高のシャンパンを飲んだ時のような心地よい酔いを感じます。
演技が終わった後もしばらく酔いから覚めることができません。
身動きができなくなるという意味では同じです。
羽生選手のプログラムは、『天と地のレクイエム』、『生命』でもあるという『SEIMEI』、そして今回の『天と地と』のように、天上と地上、あの世とこの世、彼岸と此岸、生と死、を暗示するものが多いような気がします。
考えてみれば、最初の世界選手権のときの『ロミオとジュリエット』も生と死のドラマでした。
それが時として、羽生選手の中に儚さや無常観を感じさせるのかもしれません。
また平家物語の冒頭を思い出します。
羽生選手も、戦い続けた長い年月を経て、同じことを感じているのでしょうか。
祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり
沙羅双樹の花の色 聖者必衰の理をあらはす
奢れる人も久しからず ただ春の夜の夢のごとし
猛きものも遂には滅びぬ ひとへに風の前の塵に同じ
今日は待ちわびていたNumber1019号の発売日です。
読むのが楽しみな記事が満載です。
ブック・イン・ブックも楽しみ!
最後までお読みいただきありがとうございました。
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2021年01月06日
上杉家と伊達家の家紋
「天と地と」の衣装の花は沙羅双樹の花のようだと前記事に書きましたが、
衣装の背には、花と共に2羽の雀が飛んでいますね。
このプログラムのテーマが上杉謙信だとすれば、
上杉家の家紋にある雀をデザインしたものなのかなと連想しますね。
これは「竹に二羽飛び雀」と呼ばれる家紋で、
「上杉笹」と呼ばれるほど、上杉家と深く結びついています。
ところが、上杉家は伊達政宗の祖先に、この「竹に雀」の紋を贈っていて、
形は違うものの、伊達家の紋も「竹に雀」の紋になります。
伊達政宗の祖先に当たる伊達実元と上杉家の娘の婚姻の証として、上杉家から伊達家に贈られたものだということです。
実際にはこの婚姻は成就しなかったのですが、家紋はそのまま伊達家に残り、今では「仙台笹」「伊達笹」とも呼ばれています。
伊達政宗は他にも複数の家紋を使っていますが、その中で最もよく知られているものです。
ヨーロッパの貴族のエンブレムのようで、可愛いデザインですね。
上杉謙信のことを色々調べているうちに、こんなところに上杉家と伊達家のつながりがあったことを発見し、驚きました。
羽生選手はそんなことも承知の上で、二羽の雀を衣装に配するよう依頼したのでしょうか。
Originの衣装にあった蝶のように、雀のモチーフもかなり凝ったオリジナルなものなのでしょうね。
いつか伊藤聡美さんがデザイン秘話として語って下さるといいなと思いました。
羽生選手が「天と地と」に込めた想いや、秘められた物語はまだまだたくさんありそうな気がしています。
最後までお読みいただきありがとうございます。
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2021年01月05日
沙羅双樹の花の色
最初に「天と地と」の衣装を目にした時、真っ先に思い浮かんだのは「花になれ」の衣装でした。

ブルーと白の地に、桜と思われる花を散らしたデザインという共通性があるからだと思います。
この衣装もよく似合っていますね。「花になれ」も大好きなプログラムです。
写真は2013年全日本選手権のメダリスト・オン・アイス。
7年前になりますね。
今回の衣装も最初は桜かと思いましたが、音楽が冨田勲さん作曲の新平家物語のテーマからアレンジされた部分もあるということで、これは沙羅双樹なのではないかという説が説得力があるかなと思い直しました。
よく知られた、平家物語の冒頭の句。
祇園精舎の鐘の声
諸行無常の響きあり
沙羅双樹の花の色
盛者必衰の理をあらわす
奢れる人も久しからず
ただ春の夜の夢のごとし
猛きものも遂にはほろびぬ
偏に風の前の塵におなじ
羽生さんの「天と地と」の衣装
— gokuri@LotRink🪶 (@gurikonoomake1) December 31, 2020
やはり桜ではなく沙羅双樹🍃
平家物語からのインスピレーションでしょうか。沙羅木は仏教三聖木の1つで釈迦は二本の沙羅の下で入滅したとか。日本ではインドのシャラの木に擬して夏椿を沙羅として尊んでいます。白く可憐な花です
#羽生結弦 https://t.co/G9tfdDCNbO pic.twitter.com/NWGZYvqxwa
,
>RT
— h o (@adnoh6) December 31, 2020
天と地との衣装、花が平家物語ゆかりの沙羅双樹では、というのは面白い🌸
今回の衣装、色々なお花モチーフがありそうだよね。
背中や胸の辺りは、牡丹や八重桜のような花びらが重なってる大輪の花のイメージ。鳥もいるからまさに花鳥図のような美しさ✨→ https://t.co/g13X7C7wEg pic.twitter.com/KjnM40BCJw
プログラムのテーマとなっている上杉謙信公が、仏教に深く帰依していたことを考えると、
やはりこの花は桜ではなく、白い沙羅双樹の花だと思えてきます。
「冨田勲の音楽」とプログラムを聴き比べたけど、羽生くんの音源まさにこれだ。
— h o (@adnoh6) December 27, 2020
11曲目の「天と地と」、12曲目の「新平家物語」。
既出の通り、「天と地と」の冒頭から始まって、4S後の琴(箏)の音から「新平家物語」の冒頭に移動。
この後4T1Eu3S後の笛(フルート?)が終わるまでずっと新平家物語。→ pic.twitter.com/0hMDeL8nW6
音楽には箏と琵琶が効果的に使われていて、冨田勲さんらしいスケールの大きさの中に、和楽器が見事に現代音楽の趣さえ感じるアレンジとして生かされていて、大好きです。
謙信公も琵琶の名手だったとか。
昨年のGPF、全日本で優勝を逃したことで、羽生選手が、
「自分自身去年のシーズンで、(いずれも2位に終わった)全日本やグランプリファイナルのこともあって『自分が成長していないんじゃないかな』『だんだん戦えなくなっているんじゃないかな』という思いがあったりして、『戦うの疲れたな』って思ったんですよ、一瞬。
やめることはいつでもできるし、多分それを望んでいない、応援してくださる方々はたくさんいらっしゃると思うんですけれども。
ただそういった戦いの中で、試合の中で得られる達成感とか、試合があるからこそ乗り越えることができる苦しみだとか、そういったものがやっぱり好きなんだな、とあらためて思っていた」
(REALSPORTS)
と考えていた時に、「盛者必衰の理」という言葉に行きついたとしても不思議ではないと思います。
しかし、その道理を受け入れた上で、それをテーマにして最高のプログラムを創り出してしまうところが、羽生結弦の羽生結弦たる由縁です。
このプログラムは羽生結弦という稀代のフィギュアスケーターが行きついた、究極の集大成となる可能性すらあると感じています。
この次にこのプログラムが観られるのはいつになるのでしょうか。
今シーズン中、もし3月にストックホルムで世界選手権が開催されれば2回目を観られるるはずですが、今の世界の状況ではそれも定かではありません。
そして来シーズンはもうオリンピックシーズンとなります。
2022年の北京で「天と地と」が観られることを期待してもいいのでしょうか。
結弦くん、どうでしょうか?
期待してもいいですか?
最後までお読みいただきありがとうございます。
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2021年01月03日
身体表現の真髄ここにあり
今日は新年初のヤマカイTVで、プロバレエダンサーのヤマカイさんによる、
「天と地と」の解説を視聴しました。
久しぶりに見るヤマカイさんは髪を短くカットして、少し印象は変わりましたが、
トークは変わらずユーモアを交えながら、羽生選手の演技をバレエダンサーの視点で解説してくれました。
羽生選手への尊敬ゆえか、いつの間にか「羽生様」呼びになっています。
先ずは動画をご覧ください。
ヤマカイさんのご指摘通り、羽生選手はその容姿、音感、技術力と、多くの天賦の才に恵まれており、
奇跡のDNAと言われるくらい、稀に見る神様の名作品ではないかと思ってしまいます。
ヤマカイさんも
「表現は圧倒的な技術の上に成り立つもの」
「身体表現の真髄ここにあり」
そしてPerfection、Perfectionを連呼していましたね。
本当に、観れば観るほどさらに惹きつけられていくプログラムです。
これに勝つにはどうしたら良いのでしょうか。
これはもう、ライバルたちが、戦意喪失するレベルなのではないだろうか。
それに加えて、衣装の素晴らしい美しさ。
次回は衣装についてもゆっくり検証したいです。
さて、新年も3が日が過ぎ、明日からは通常業務に戻る方も多いと思います。
新年早々、関東地方では新型コロナの感染者数が1,000人を超えるほど激増してしまい、緊急事態宣言の発出を国に要請するところまで事態は深刻になっています。
まだまだウィルスとの戦いが続く2021年ですが、
どうか羽生選手と皆様の健康が守られますように。
本年もどうぞよろしくお願いいたします
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2020年12月31日
光のさす方へ
今年も最後の日となりました。
Sportivaから折山淑美さんの素敵な2本の記事をお借りして、全日本選手権を振り返り、
今年最後を締めくくりたいと思います。
全日本選手権ショート・プログラムで首位発進し、落ち着いてフリーを迎えた羽生結弦。初披露となった『天と地と』をノーミスで演じ、5年ぶり5度目の優勝を飾った。約10カ月ぶりとなった大舞台で羽生が見せた未来への強い意志とは。@sunao_notohttps://t.co/b0WGGliRXb
— 集英社スポルティーバ (@webSportiva) December 28, 2020
全日本選手権ショート・プログラム(SP)首位発進後、翌日のフリーに向けて羽生結弦は「まずはしっかりと体を回復させることが大事だと思います」と話した。フリー当日の午前の公式練習では、落ち着いた雰囲気が印象的だった。
(中略)
迎えた夜の本番。
羽生は、1969年のNHK大河ドラマ『天と地と』のテーマ曲で滑り出すと、
計算された動きの中で力みのない4回転ループを難なく決め、

4回転サルコウ、

トリプルアクセル+2回転トーループ、3回転ループと、流れを途絶えさせない。

さらに後半も力む素振りも見せず、4回転トーループ+3回転トーループと

4回転トーループ+1オイラー+3回転サルコウ、

トリプルアクセルを鮮やかに跳んだ。

SPでは4回転2本に不満を持っていたが、この日は「これぞ羽生結弦のジャンプ!」と強くアピールするような、見事なノーミスのジャンプを続けた。
羽生は演技後にこう話した。
「まずは自分自身、このプログラムに思い入れがあって曲を聞けばすごく感情も入るし、振りの一つひとつにもいろんな意味を込めています。そうした中でもやっぱりジャンプを完成させないと、プログラムの一連の流れとして伝わるものも伝わらなくなってしまう、と。
本当に自分が伝えたいものが、このプログラムで見せたかったことが、ジャンプが途切れなかったという意味でも、少しは見せられたのかなと思います」
さらに昨シーズンを振り返り、吐露した。
「ともに2位だった全日本選手権とグランプリ(GP)ファイナルのこともあり、自分が成長していないんじゃないかなとか、だんだん勝てなくなっているのではないかなとか、そういう思いがあって、一瞬、『戦うのが疲れたな』と思った時期もあった」
だが、コーチと離れ、ひとりで練習して落ち込んだり、考えを巡らせたりする中で、戦いの中で得られる達成感や、試合があるからこそ苦しみを乗り越えられることなど、競技を続けて向き合うことが「やっぱり好きなんだ」と、あらためて感じたという。
大河ドラマの『天と地と』は、「義」を重んじた武将・上杉謙信の物語だ。謙信の戦いに対する考え方や、そこにある美学。さまざまな規制がある中で葛藤し、最終的に出家した人生。
そうした悟りの境地へ達した謙信の価値観と、今の自分の思いが少し似ていると感じて、羽生は思いをリンクさせながら滑ったと話す。
(中略)
羽生は、自身の思いが詰まったプログラムで215.83点を獲得。合計を319.36点にし、5年ぶりの優勝を果たして昨年の悔しさを晴らした。
コーチ不在の中でさまざまな悩みを持ちながら、そして自分自身の心の中の葛藤とも戦いながら出場した全日本選手権。
その舞台での初披露でノーミスの演技をした『天と地と』からは、彼自身の「新しい自分の代表的なプログラムに育て上げていく」という、強い意志も伝わってきた。

新プログラム「天と地と」の中にも、SEIMEIを演ずるに当たって野村萬斎さんから示唆された「天・地・人」というテーマが受け継がれているなと感じました。
SEIMEIをさらに進化させていく「天と地と」は、初めて観た時のインパクトとしては旧「ロミオとジュリエット」、その完璧さと言う点ではヘルシンキワールドの「Hope & Legacy」を彷彿とさせるものでもありました。
一度観ただけで、これは過去最高のフリープログラムになるのではないか、
という思いが沸き上がってきました。
スケートを滑る喜びを取り戻すきっかけとなった「春よ、来い」を舞った。
今年はコーチ不在で「精神的にどん底まで落ち込んだ時期もあった」と振り返る羽生結弦。しかし、こんな時代こそ悩むよりも自分のできることを考えたという。何よりもこの世の中に一番伝えたいメッセージ。全日本選手権でみせたのは羽生の強い決意だったーー。@sunao_notohttps://t.co/uJZn86HWiF
— 集英社スポルティーバ (@webSportiva) December 30, 2020
新型コロナウイルス感染拡大を受け、羽生結弦は感染リスクを考慮し、グランプリ(GP)シリーズの欠場を決めた。自身の行動を自粛することで、ファンやメディア、関係者らが移動に伴う感染のリスクを減らしたいという配慮もあった。
そうした中、出場を決めた12月25〜27日の全日本フィギュアスケート選手権。だが、感染の第3波の中での開催となり、「自分が出てもいいのか」との葛藤があったと、競技前日の公開練習後に吐露していた。そして、5年ぶりの優勝を果たした後も、その思いは消え去っていないと話した。
「僕の望みはとても個人的なことなので、貫いてよかったのかとの葛藤は今でもあります。ただ、自分としては、もし(来年3月の)世界選手権が開催されるのであれば、(大会に向けて)近づいておかなければ今後が難しいという思いがすごくあった。コロナ禍の暗い世の中でも、自分自身がつかみ取りたい"光"に手を伸ばしたという感じです」
開催されることになれば、世界選手権で2022年北京五輪の国別出場枠が決まる。そうした大切な大会への出場権を争う全日本選手権に、日本男子フィギュアを牽引する者の責務として参加した面もあったのかもしれない。
(中略)
羽生は「精神的にはどん底まで落ち込んだ時期もあった」と振り返る。4回転アクセルの練習の衝撃で足に痛みが出て、他のジャンプもどんどん崩れた。トリプルアクセルさえ跳べない時期もあり、「これからどんどん技術が落ちていくのだろうか」との思いがよぎり、負のスパイラルに陥ったという。
「自分がやっていることがすごく無駄に思える時期が長かった。トレーニングや練習の方向を考えるだけでなく、新しいプログラムの振り付けも考えなければいけなかったり、自分で自分をプロデュースしていかなければいけないプレッシャーもありました。応援してくれる人たちの期待に、本当に応えられるのか。そもそも自分は4回転アクセルを跳べるのかと......。
それに、入ってくる情報では他の選手が皆すごくうまくなっているようだったので、自分ひとりが取り残され、ただ暗闇に落ちていくような感覚になった時もありました。『ひとりは嫌だな』『疲れたな』『もうやめようか』とも思ったりして。
でも、エキシビションの『春よ、来い』と、
ノービス時代の『ロシアより愛をこめて』を滑った時に、

『やっぱりスケートが好きなんだな』と思ったんです。
スケートじゃないと自分はすべての感情を出し切ることができないな、と。だったらもうちょっとわがままになって、誰かのためではなく自分のためにも競技を続けてもいいのかな、という気持ちになれた。そこでちょっと前に踏み出せました」
(中略)
「今、スケートができること自体、本当に恵まれていることなんだなと思いました。苦しかったかもしれないけど、こういう状況だからこそ、自分の演技が明日までではなくてもいいから、その時だけでも、演技が終わった後の1秒だけでもいいから、見ている人たちの生きる活力に少しでもなったらいいなと思いました」
フリーの『天と地と』では、戦国武将・上杉謙信が抱いた、戦いの中での葛藤を自らとリンクさせ、羽生の今の心象風景を緊張感の中で見せようとした。
葛藤の末に出場を決めた全日本ゆえに、そして、このような世の中だからこそ完ぺきな演技を見せたいという強い決意を感じた。自分の演技を観てくれる人たちが笑顔になる瞬間を少しでも増やしたい、という気持ちがプログラム全体に表われていた。
12月28日のメダリスト・オン・アイスで、羽生は一歩踏み出すきっかけになった『春よ、来い』を滑った。彼自身が『天と地のレクイエム』とともに、自分らしさや自分の色を出せていると説明していたプログラムだ。
演技後の場内インタビューで羽生は「(『春よ、来い』は)この時期にピッタリというか、何よりもこの世の中に一番伝えたいメッセージだったので。少しでも(観客の)心が温まるように演技をしました」と話した。
いつかは春が来る。
その時へ向けて、しっかりと一歩を踏み出したいという、羽生結弦の強い意志を感じさせる全日本選手権の3本のプログラムだった。



羽生選手の素晴らしい3つのプログラムで1年の最後を迎えられたこと、
感謝と喜びで心が満たされています。
今年一年、当ブログをお読みいただきありがとうございました。
心よりお礼申し上げます。
新しい年が羽生選手と皆さまにとって、光を取り戻す再生の年になりますように。
来年もよろしくお願いいたします。
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2020年12月27日
幸福感とエクスタシー
MassimilianoさんのTwitterより
In other sports what Yuzuru Hanyu has achieved is called a "clear path"
— Massimiliano Ambesi (@max_ambesi) December 26, 2020
He seemed light and ethereal in every movement
From start to finish he executed each element with precision and confidence
He was able to generate a feeling of well-being in anyone who admired his masterpiece pic.twitter.com/qgIrGO4wWu
他のスポーツでは、羽生結弦が達成したことは「クリアパス」と呼ばれます。
彼は全ての動きで軽くて空気のように見えました。
最初から最後まで、彼は各要素を正確かつ自信を持って実行しました。
彼は彼の傑作を称賛する全ての人に幸福感を生み出すことができました。
そうなのです。この感情は幸福感なのです。
羽生選手は「一瞬でも皆さんの気持ちが癒されれば」と言っていましたが、
それどころか、この演技を観る前と見た後では、世界が違って見えるような気がします。
人が生きて行くのには食料もお金も不可欠なものですが、美しいもの、心の糧になるものが絶対必要です。
それは美しい夕日であったり、可憐な花であったりもしますが、
羽生結弦の演技は圧倒的な力で私たちに幸福感を与えてくれました。
これは一種のエクスタシー。
羽生選手本人による解説で、もう一度。
FSは215.83点
自己ベスト更新とか。
しかし私としては230点は出てもいいんじゃない、と思いました。
<今日これからの予定>
17:04~21:11 女子FS
表彰式(女子、アイスダンス、ペア)
テレビ放送
・BSフジ・CSフジテレビONE(LIVE)
17:00~19:00
・フジテレビ(地上波)
19:00~21:15
YouTubeライブ配信
22:00~ 女子上位3選手共同記者会見
[ライブ配信有り]
22:30~23:00 世界選手権2021の代表発表
[ライブ配信有り]
今夜、正式に世界選手権代表がアナウンスされます。
そして明日はメダリスト・オン・アイス
エキシビションも新プログラムが来るのでしょうか。
楽しみです。
今日は結弦くんはどんな風に過ごしたのかな。
また明日会えると思うと嬉しい

最後までお読みいただきありがとうございました。
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感動冷めやらず
昨夜は感動と興奮でよく眠れませんでした。
昨夜の演技が本当に素晴らしくて、何と表現してよいのか言葉が見つかりません。
完璧すぎて震撼しました。
何度観ても、また観たくなってしまう「天と地と」です。
強さ、美しさ、気高さ、清々しさ。
<表彰式>
全日本フィギュア2020
— 秀(さかえ)사캉💎🐈💕 (@yuzu1207_s) December 26, 2020
男子フリー part 21
表彰式#羽生結弦 #全日本フィギュア2020 #男子フリー #yuzuruhanyu pic.twitter.com/vHz1CKLyZX
5回目の優勝 おめでとう!!
この美しい衣装は伊藤聡美さんに間違いないですね。
<共同記者会見>
ANAのパーカーがすごく似合っています。
私はソチの時の会見のジャケットを思い出してしまいました。

背景も含めて似ていませんか?
ファンとして大きな関心のある、北京オリンピックと4回転アクセルについてはこのように語っていました。(スポーツ報知記事より)
来年の東京オリンピックも定かではない中、2022年2月の北京オリンピックが開催できるかどうか分からない状況ですが、
もし開催されたのならば、羽生選手は3度目の金メダルを手にするだろうと信じています。
昨日の演技を観てからは、それは確信になりました。
そして、4Aのために自分の体を犠牲にするのは絶対避けてほしいけれど、
羽生選手の夢が叶うよう心から願っています。
ところで、SPのスピン0点判定の件です。
<SPの̪̪シットスピンノーカンの件>
SPでのスピンが0点と判定された件について、スケ連から文書で公式見解が出ています。
最早どうでもよいですが、どうでもよいとすれば再び繰り返す可能性があるので、しっかり記憶しておかねばなりません。
強いて言えば、これまでは判定理由を開示しなかったのに対し、今回は文書で理由を開示したところが、進歩と言えば進歩と言えなくもないかもしれません。
羽生のスピン0点 レフェリーが公式説明
「足替え後、シット姿勢なく成立せず」
配信 デイリー
男子の競技終了後、日本スケート連盟は、ショートプログラム(SP)で、羽生の足替えシットスピンが0点と判定されたことについて、レフェリーの判断を発表した。
吉岡伸彦レフェリー名で「フィギュアの採点システムでは各要素の要素名(基礎点)を認定するのは、技術役員の仕事、GOEとコンポーネンツを評価するのは審判員の仕事です。
今回の件は基礎点の問題なので、審判員の評価ではなく、技術役員の認定に係る事項です。レフェリーは審判員の責任者ですが、同時に競技の責任者でもありますので、技術役員に確認した内容を下記のとおりお伝えします。
関連するルールは『シット・ポジションのためには、回転脚の大腿部が少なくとも氷面に水平』『スピンの姿勢が成立するのは連続した2回転が必要』『足換えあり一姿勢のスピンの場合にはSPではどちらか一方の足で姿勢が成立していなければノーバリュー(0点)になる』で、これらは、今季からの新ルールプロスパーというわけではありません。
羽生選手の足替えシットスピンについては、足換え前はシット・ポジションが成立していますが、足替え後は2回転連続したシット姿勢がなく、シット・ポジションが成立しておらず、ノーバリューという認定になりました」と、文書を公表した。 SPでの羽生は圧巻の演技に見えたが、自己ベストの111・82点には届かなかった。原因は中盤のスピン。最後のジャンプのトリプルアクセル直後の足替えシットスピンが0点されていた。 報道陣からの問い合わせにSP終了後、日本スケート連盟は吉岡伸彦レフェリーの回答として「他のもノーバリュー(0点)の選手があります。採点の理由をお答えすると、その選手のみフリーの演技での修正が可能となり公平性にかけますので競技終了までお答えできません。現時点でお答えできることは、理由についてはISUテクニカルハンドブックの該当する箇所を読んで頂きたい、ということだけです。競技終了後であれば、説明いたします」と、文書を発表していた。
以上の公表された見解が果たして正しいのかどうかは私にはわかりませんが、
専門家の方々にじっくり議論していただきたいです。
今日も続々と情報が入って来そうですが、
余りにもたくさんで、ついて行けるかどうか自信ありません。
確実なのは、今日も何度も2つの新プログラムを観てしまうということです。
大きな仕事を終えて、結弦くんが少しでも幸福感を味わってくれますように。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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2020年12月26日
天と地と 公式練習動画
あと1時間後に迫った「天と地と」の初披露。
多くの方がもうテレビの前にいらっしゃるのではないでしょうか。
私も先程帰宅し、テレビの前でパソコンに向かっています。
どんな曲なのか、どんな振付けなのか、全くわからずにいきなり演技を観るのは衝撃が大きすぎるなぁと思っていましたが、本日の公式練習の様子を伝えてくれている方のTweetをシェアしたいと思います。
秀さんに感謝です。
全日本フィギュア今夜王座決定sp
— 秀(さかえ)사캉💎🐈💕 (@yuzu1207_s) December 26, 2020
Part 7
羽生結弦 FS 「天と地と」曲かけ練習#男子フリー公式練習#羽生結弦 #全日本フィギュア2020 pic.twitter.com/gQIixWLnwO
オーケストラと箏と三味線の音色のハーモニーが雄大さと繊細さを表しています。
筝曲のようでもあり、現代音楽のような響きもあり、羽生選手の選曲センスが素晴しいと思いました。
ジャンプ構成はこのようになっています。

羽生選手の滑走順はこの後、最終グループの最終滑走、21:03からです。
テレビの前で息を凝らして正座して観ます。
リザルトページはこちらです。
(FSの得点詳細をクリックして下さい。自動更新します。)
最後までお読みいただきありがとうございました。
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