エフゲニア・メドベデワ
2022年02月28日
フィギュア界も無関係ではいられないウクライナ問題
北京オリンピック終了直後に始まったロシアによるウクライナ侵攻は、フィギュアスケート界も無関係ではいられない問題です。
国際的な非難はもちろんのこと、ロシア国内でもプーチン大統領の決断に対する批判は大きく、ウクライナ侵攻の直前の1月末には、なんと、強力な支持団体であるはずの「全ロシア将校の会」からも痛烈な批判と共に、プーチン氏に辞任を求める声明が出ていたのです。
ウクライナに軍事圧力かけるロシア・プーチン大統領に辞任要求 退役大将が痛切な訴え https://t.co/F50IC8upAa
— iceangelo (@iceangelino) February 27, 2022
プーチン大統領に戦争を止めるよう「直訴」したのは退役将校でつくる「全ロシア将校の会」。主導しているのは、会長を務めるレオニード・イワショフ退役大将(78)だ。現役時代にはコソボ問題なども担当し、NATO側と接触。NATOの東方拡大反対論者でもある。
1月末、会は公式サイトに声明文を発表した。その概要は次のとおりだ。
「今日、人類は戦争の前夜に生きている。戦争は巨大な悪、犯罪だが、ロシアは、迫りくるこの破局の中心にいる。外からの脅威はもちろんあるが、今、それは危機的ではなく、ロシア国家の存在や死活的国益を損なうものではない。NATOの軍勢は脅威となる活動を展開してはいない。だからウクライナをめぐる状況は、ロシアを含む国々が国内の勢力(エリート)のために人為的につくりだされた、打算的な性格のものである」
ウクライナとの戦争が起きた場合、ロシアの国際的な地位は地に落ちる、とも指摘する。
「対ウクライナ戦争が起きれば、1)ロシアの国家的存立に疑問符がつく2)ロシアとウクライナは永遠に絶対的な敵となってしまう3)両国で、千人単位(万単位)の若者が死ぬ」
「戦場では、ロシア軍は、ウクライナ軍だけでなく、NATO諸国の軍人、兵器と対峙し、NATOはロシアに宣戦布告するだろう。さらに、ロシアは世界の平和を脅かす国とされ、きわめて深刻な経済制裁を科され、国際社会の除け者となろう」
ロシアが10万人以上の軍をウクライナ国境に展開していることについては「財界やマスコミを含む、エリート層の保身の手段ではないか」と分析、その上でプーチン大統領の辞任を求めている。
「戦争は自らの反民族的な権力を保ち、国民から奪った財産を守るための手段である。我々ロシアの将校は大統領に対し、戦争を挑発し、結果的に結束した西側の軍に対抗して孤立するような犯罪的な政策を止めるよう求める。(国民主権を定めた)憲法3条にのっとり、辞任を求める。退役軍人、予備役、ロシア市民に、プロパガンダや開戦に反対する声を積極的にあげるよう、呼びかける」
ロシア各地で市民による自発的なデモも発生し、逮捕者が多数出ています。
そんな中で、現役フィギュアスケーター、元フィギュアスケーターからの抗議も出てきています。
ウクライナ侵攻を続けるロシアに対し、ロシア国内でも反戦運動が広がりを見せている。
— The Asahi Shimbun GLOBE+ (@asahi_globe) February 26, 2022
ネット空間では著名人たちが画面を真っ黒にして抗議の姿勢を示している。フィギュアスケート選手、エフゲニア・メドベージェワさんもそんな一人だ。(佐々木正明 @izasasakima)https://t.co/j2tqkCCeMt
「悪夢のように早く終わってほしい」
オリンピックのリンクで情熱のプログラムを披露し、日本のファンを魅了したメドベージェワさんは自らのインスタグラムを真っ黒にして、やり切れぬ感情をつづった。
ウクライナ情勢が緊迫化する中で、メドベージェワさんが訴えたこのメッセージは、言論統制や反政権派への摘発を進めるプーチン政権に盾突く行動ととられかねない。
ロシアでは今、全土の都市で、ウクライナ侵攻を継続するプーチン政権に対して反対する街頭デモなどが散発的に行われているが、治安部隊が次々に摘発している。
拘束者はすでに1400人を超えており、なおも政権の判断に反旗を翻す者たちへの目を光らせている。
インスタグラムに国内外に135万人のフォロワーがいるメドベージェワさんの発信力は大きく、その分、治安当局を刺激するだけに、彼女の今回のメッセージは勇気ある行動なのだ。
今回、メドベージェワさんが更新した黒い背景の抗議インスタグラムには、白色のメッセージの下に平和の象徴でもあるハトのイラストがついていた。
オリンピックでは世界の平和を願い、開会式でハトが会場を飛ぶ。ロシアを代表したオリンピアンとして、フィギュアスケート界でも交流を続ける隣国ウクライナのことを気遣い、はっきりと意思表示をせずにいられなかったのだろう。
ロシアではほかの著名人もインスタグラムで画面を真っ黒にした抗議メッセージを流している。
メドベージェワさんと同じフィギュアスケーターではソチオリンピックペアの金メダリスト、タチアナ・ボロソジャルさんが「戦争はいらない」とメッセージをつづっている。
2002年ソルトレイクシティオリンピック男子シングルのアレクセイ・ヤグディンさんも攻撃をやめるよう訴えている。
北京冬季オリンピックが終わった余韻もあり、このレジェンドたちの言葉は世界のファンに響くだろう。
その一方で、ドーピング疑惑の渦中にいるカミラ・ワリエワ選手を想起させるTwitter動画がロシア国防省から投稿されています。
ドーピング問題で渦中の人となり、フィギュア女子フリーで金メダルを期待されながら4位に終わったカミラ・ワリエワ選手。
— The Asahi Shimbun GLOBE+ (@asahi_globe) February 20, 2022
彼女を励ます運動が母国ロシアで広がっているが、その一環としてロシア国防省がTwitterに投稿した動画に注目が集まっている。https://t.co/cJLf1np6wB
この「ワリエワ・ショック」に乗じたのがロシア国防省だった。プーチン政権はいま、ウクライナとの国境付近に軍部隊を増強して同国内にいる親ロシア派を支援しつつ、ウクライナ政府や欧米諸国との対決姿勢を鮮明にしている。欧米諸国や日本などはロシアとの外交努力を行なっているが、緊張は緩和されていない。
こうした状況下で、ロシア軍は「ワリエワを支持する」との名目で次のような動画を投稿した。
#Видео Воспитанники Ставропольского ПКУ присоединились к флешмобу #КамилаМыСТобой в поддержку российской фигуристки Камилы Валиевой.#Минобороны #СтавропольскоеПКУ #КамилаМыСТобой pic.twitter.com/Re8ybsxsN8
— Минобороны России (@mod_russia) February 17, 2022
ワリエワ選手のドーピング疑惑を逆手にとってのロシアの正当性を示唆するかのような動画です。
ワリエワ選手が二重の意味で利用されているようで、私は大変悲しく、同時にまた、不愉快な気持ちになりました。
さらに今後を考えると、ロシアのアスリートたちが国際試合から排除される可能性も考えられ、なんとフィギュアスケートのコーチたちもロシア国外に移籍する可能性も指摘されています。
ウクライナ情勢を受け #トゥトベリーゼ 氏が他国コーチに電撃移籍浮上 日本も有力候補 https://t.co/QsvcOmtbL8
— 東スポ (@tospo_prores) February 27, 2022
フィギュアスケート女子のカミラ・ワリエワ(15=ロシア)を巡るドーピング問題で渦中にあるエテリ・トゥトベリーゼ・コーチ(48)が、ウクライナ情勢を受けて他国コーチに電撃移籍する可能性が浮上し、日本も有力候補になりそうだ。
ロシアメディア「MKスポーツ」は、同国によるウクライナ侵攻を受けてスポーツ界でロシア勢の〝締め出し〟が始まっていると指摘。今後の展望について、RMAビジネススクールの責任者でスポーツ経営学部の学部長であるキリル・クラコフ氏の見解を報じた。 「短期的に見れば、ロシアのスポーツ界は大変なことになっている。最初の一歩はすでに踏み出され、やがて連鎖反応が起こる。すべての国際連盟や協会は、我々をスポーツから排除し、契約を破棄するだろう」と指摘。ロシア勢がスポーツ界の公式大会から次々と出場を禁じられるとの見通しを示した。 クラコフ氏はそれによってまず起きるのが、仕事上で国籍は関係ない指導者の流出と分析。「もちろん最高のコーチたちが外国の連盟で働きに行くようになる。たとえば、エテリ・トゥトベリーゼは競合国に移る可能性が非常に高い」との見通しを示した。トゥトベリーゼ氏は北京五輪で教え子のシェルバコワが金メダル、トルソワが銀メダルを獲得するなどフィギュア界で現在最も勢いのある指導者。働き口を求めて他国へ移籍する動きが出ているのだ。 トゥトベリーゼ氏は結果至上主義のため強豪国への移籍となりそうだが、米国ではワリエワを巡るドーピング問題で批判が根強い。そうなると、フィギュア大国の日本などが有力候補になりそうだ。 フィギュア界でまさかの〝トゥトベリーゼ・ジャパン〟が誕生するのか。その動向から目が離せなくなってきた。
東京スポーツ
トゥトベリーゼ女史のやり方が果たして日本で通用するのかは甚だ疑問ですが、戦争が長引けば長引くほど、フィギュアスケート選手の国際大会への参加は難しくなり、コーチの失業問題にもなっていくというのは想像できることです。
国際的な外圧でプーチン大統領の考えを変えるのは極めて難しく感じる中で、唯一の希望は、フィギュアスケーターの皆さんを含めて、ロシア国民の皆さんの内側からの反戦の圧力で戦争を終わらせるよう現政権働きかけていただくことです。
一日も早く戦争が終結し、羽生選手が自らのルーツとまで言い、尊敬するスケーター、コーチがいるフィギュアスケート大国としてのロシアが保たれますよう、祈るばかりです。
お読みいただきありがとうございました。
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