アンジェロ・ドルフィーニ

2019年11月11日

惑星ハニューの住人はただ一人




11月6日の記事でご紹介した『惑星ハニューにようこそ』 のNympheaさんが、先日の続きを翻訳して下さっているので再びご紹介したいと思います。

手間のかかる音声からの翻訳本当にありがとうございます。

参加者は前回と同じく、マッシミリアーノ・アンベージさん(M)、アンジェロ・ドルフィーニさん(A)、司会のフランチェスコ・パオーネさん(F)です。

今回は羽生選手についての部分は短いですが、
ユーモアを交えつつも、胸のすくような鋭い指摘に耳を傾けて下さい。




ポッドキャストKiss&Cry II第2回(その2)「フィギュアスケートのマエストロ」

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2019年11月06日

マッシミリアーノさんのユヅル愛の起源



惑星ハニューへようこそ』で、いつもイタリアから素敵な記事を上げて下さるNympheaさんが、またまた長編の素晴らしい記事を上げて下さっています。

とても長い翻訳の中から、一部ご紹介させていただきます。

手間のかかる放送からの翻訳をして下さることに本当に頭が下がります。



ポッドキャストKiss&Cry II第2回(その1)「羽生結弦と魔法のオーラ」


19 スケカナ スポニチ 長久保 1 (2)
photo:長久保豊(スポニチ)



スーパーマジンガンポッドキャスト第2弾が放送されました(今回は何と132分17秒という驚異的な長さです)

議論されたテーマは以下の通り

  1. 羽生結弦と彼の「魔法のオーラ」。スケートカナダにおける羽生結弦の圧巻演技の分析
  2. アレクサンドラ・トゥルソワ、驚天動地のインパクト
  3. エフゲニア・メドヴェデワに対するロシアメディアの怨恨
  4. チームイタリア:スケートカナダでマッテオ・リッツォに何が起こったのか?
    ダニエル・グラッスルについて一言
  5. スケートカナダ雑感とフランス国際の展望

以上の中から取り敢えず1)を抄訳します。


出演者
フランチェスコ・パオーネ(司会)(F)
マッシミリアーノ・アンベージ(ジャーナリスト、冬季競技アナリスト)(M)
アンジェロ・ドルフィーニ(元ナショナルチャンピオン、国際テクニカルスペシャリスト)(A)

(以下、発言者によって、文字色を変えて下さっています。
司会のフランチェスコさんが赤、マッシミリアーノさんが黒、アンジェロさんが青です。
分かり易いですね!
特に読んでほしいところは太字にしました。)

F:ではすぐに宇宙的だった羽生の話から始めよう
7日前、君達は羽生の目標は300点を超えてスケートアメリカでのネイサン・チェンの演技に答えを返すことだと言った。

今だから、もうネタバレしてもいいよね。
マッシミリアーノ、君は放送の外で300点を大幅に超えるだろうと強調した。
そしてその通りのことが起こった。

君のこの確信はどこから来ていたの?

M:彼が9月中旬に出場したカナダのチャレンジャーシリーズ、オークビルのオータムクラシック・インターナショナルだ。
幾つかのミスはあったし、僕達が到底同意できないコントロールパネルの判定や厳し過ぎるジャッジングという問題はあったけれど、彼はこの大会でシーズンのこの時期にしては良好なコンディションを見せたし、特に練習ではほとんどミスをしなかった。

あれから5週間あったから、フィジカルコンディションと安定感が更に上がっていくのは明白だった。

それに僕達はイタリアのメラーノで9月初旬に開催された2008年のジュニアグランプリから羽生を見守っているからね(笑)

A:(笑)

M:僕達は彼の身体言語を読み取り、彼を理解することを学んだ。
だから彼が300点を大幅に超えると僕は確信していた。
さすがに322点とは思わなかったけれど

これについては僕の期待の斜め右上を行っていて唖然とさせられた。
僕は310点とかそれぐらいを予想していた。

それに僕が強調したいのは、オークビルの演技はネガティブではなかったことだ。
オークビルでユヅルは279点を獲得した。

今シーズン、ここまでのチャレンジャーシリーズとグランプリ大会の全ての大会を調べれば、279点を超えたのはスケートアメリカのネイサン・チェンとスケートカナダの羽生結弦だけだということが分かる。
それ以外で270点に到達した選手は誰もいない

勿論、羽生は非常に野心的なスケーターで、自分の途方もない能力を自覚しているから、オークビルの279点にはがっかりしただろう。
でもあの大会では非常にハイレベルな演技を披露した。

そこから彼のコンディションはスケートカナダで今季最高得点を獲得するまでに上昇した。
新ルールではネイサン・チェンに次ぐ歴代第2位の得点だ

でも僕の意見では、僕達はまだ彼の何も見ていない。
なぜなら、スケートカナダでは羽生は80%のコンディションだったからだ。
彼が100%の状態まで上げることが出来た時、僕達は途方もないものを見ることになるだろう。

A:間違いなく、僕達がスケートカナダで目撃したことは傑出していた。しかも羽生がシーズンのこの時期に
だから君が強調したように、シーズン冒頭の大会にも拘わらず、調整は万全だった。
羽生がグランプリ初戦で優勝するのはこれで2回目だということを忘れてはならない。
通常、僕達は12月以降になってからベストコンディションの彼を見ることに慣れていた。

今後、プログラムを更に豊かにして磨いていくだろうけれど、今のこの構成ではほぼ完璧に達したことを僕は強調したい。

ショートでもフリーでも大きなミスはなかった。
幾つかのエレメントのGOEにまだ伸びしろがあるけれど
フリーの4ループ、それにショートのコンビネーションはもっと綺麗に実施できるはずだ。

既に322点はサイエンスファンタジーの得点だけれど、更に大幅に得点を上げるには何かを加えて基礎点を上げる必要があるかもしれない。
今後、彼がフリーに4ルッツなどの新しいエレメントを装備してくるかどうか見ていこう。
彼が加えるとしたらおそらくこの4回転ジャンプだろう。
夏にはこのジャンプを大分戻してきていた。

M:簡単に入れられるジャンプではないけれど、フリーの構造を見ると、彼の考えでは最終的にこのジャンプを入れるつもりなのだろう。

僕は彼がスケートカナダの初日の公式練習で見せたような完璧なショートプログラムを滑ったら、115点に値すると思う。

A:そうだね

M:最低でも115点だ
何故ならただただ「絶対的な完璧」だからだ。

A:実際、僕なら戦略という点においてショートプログラムはいじらない。
君はもう僕の意見をよく知っていると思うけれど(笑)

M:フリープログラムはこの構成で、いずれにしても驚異的な高難度構成だけれど(笑)
多くのエレメントでGOE満点を獲得すれば、余裕で225点に達すると思う。
つまり完璧な羽生なら、ショートとフリー合わせて340点を持ち帰る

A:(笑)

M:340点なら誰も勝負することさえ出来ないだろう。

A:無理だね


(中略)

P:それでは、ここで試合後の羽生のコメントを考察したい。
何故なら非常に興味深い発言だったからだ。
特に彼はこう発言した。

もし思うような結果が得られないなら、トランジションを大幅に削減しようと思っていたと

僕の質問はこうだ。
ユヅルのこの発言の背後には何があると思う?

M:ハッタリだよ(笑)
いや、彼は疑う余地のない自分のステータスと影響力をふまえて、ISUのシステムにメッセージを発したのだ。

羽生はルールの句読点(細部)まで研究するタイプだ。
彼の全てのエレメントはGOE満点を獲得できるように設計されている。

注意して見ると、彼は非常に難しいコンビネーションジャンプ4T/eu/3Fを実施する際、拍に合わせようとしている。
拍、つまり音に完璧に合致できるよう、回転を遅らせているような印象を受ける。
GOEプラス要件の一つである「音楽に合っている」の項目も満たすためだ。

ルールの研究家でフィギュアスケートの光明(啓発者)である彼はこう自問自答したのだろう。

  • ルールではこのように規定されていて、僕はその通りにエレメンツに実施しているのに、何故、得点に反映されないのか?
  • 何故、僕のトランジションてんこ盛りのプログラムが相応の演技構成点で評価されないのか?
  • ジャンプの前後に難しいトランジションやステップを入れていて、ジャンプ自体の質もルールの要件を満たしているのに、なぜ+3しか付かないことがあるのか?

つまり、このような状況を前にして、彼は疑問を抱いていたのだ。
そして試合に勝った後、この疑問は晴れた。

試合の前に言及してコントロールパネルやジャッジにプレッシャーをかけることも出来たのに、彼は紳士だから試合が終わってから発言した。
でも問題は依然、残されたままだ。

羽生は自分のスケートのスタイルを決して変えないだろう。
これが羽生なのだ
彼が13歳で初めてメラーノのジュニアグランプリ大会に出場した時から。

僕が覚えている羽生は、リンクに入って、リンクを2周ほど周回してウォーミングアップをした後、いきなりイーグルからフェンスほどの高さの2アクセルを跳んでいた。

13歳だよ!

その後で、残りの全ての要素をやっていた。
彼はどの練習セクションでも様々なことを試していた。

これが彼のジュニアグランプリデビューだった。
彼は実質、まだ子供だったけれど、既に特別な何かがあった。

それは何か?
彼はどのジャンプも神聖化していた。
つまりジャンプは単独では存在しない。
彼にとって、ジャンプは30メートルの助走から跳ぶものではないのだ。

そしてトゥピックとその実施、この場合ルッツだけれど。

ジャンプは前後に何かを散りばめて装飾しなければならない。
これが彼のフィギュアスケートに対する考え方だ
彼にこれが変えられるはずがない。





(2008年ジュニアGPメラーノ杯FS Merano,Italy)


「OK、得点が出ないから全部変える」と口では言うかもしれないけれど、彼は絶対に変えないだろう。
何故なら、これが彼の中にあるフィギュアスケートの概念だからだ。

豊かなトランジションを伴う難しいエレメンツ
そしてこれが彼の成功の秘訣なのだ。

A:彼が披露するエレメント自体のクオリティに加えてね。

僕達はよく好んで羽生のジャンプの話をするけれど、それはこれらのジャンプが彼のトレードマークであるだけでなく、彼自身がGOEのプラス要件「エフォートレス」のエンブレムだからだ。
彼の3アクセル、4サルコウ

彼の動作のナチュラルさと滑らかさは彼を唯一無比の存在にしている。

この競技における唯一無比の存在、僕達がいつも言っているように、おそらく史上最高の選手と見なされる所以なのだ。

(中略)

しかし彼の脳裏にはこんな疑念があった。

  • 試合でも練習通りに滑れるだろうか?
    ひょっとしたら、試合のアプローチの仕方に問題があるのではないだろうか?

これが得点の問題は別として、スケートカナダの前までに見られた彼の弱い部分だ。

でも(スケートカナダでは)リンクに降りて、ショートプログラムはうまく行った。
コンビネーションで小さな問題があったけれど、既に歴史に刻まれた3アクセルを実施した。

このショートプログラムの成功によって彼は自信を取り戻し、落ち着いてフリーの演技に臨むことが出来た。
結果は見ての通りだ。

3アクセルだけれど・・・僕はあの3アクセルに話を戻したい(笑)
僕の意見では完璧な3アクセルだった。

僕の唯一の疑問は・・・アンジェロ、君が答えてよ
ツイズル>3アクセル>ツイズルと、イーグル>バックカウンター>3アクセル>イーグルとどっちがいいと思う?(笑)

A:純粋に難度という点においては、僕は個人的にバックカウンターからの方が難しいと思う。
でも今シーズンのショートプログラムの音楽にはツイズル>3アクセル>3アクセルの方が合っていると思う。
音楽のスピリット、そして曲想に完全に調和しているという観点において
だからこのショートプログラムにおける選択は非常に賢く、完璧で正しいと思う。

当然のことながら、おそらく僕達は正解が存在しないことについて議論しているのだろう(笑)
技術的に非常に難しい2通りの入り、2つの実施について話しているのだから

(記事引用以上)

かなり割愛させていただいてもこんなに長くなってしまうNympheaさんの記事全文はこちらから是非お読みください。



さらにNympheaさんの記事によると、マッシミリアーノさんは、メラーノ杯前年の全日本ジュニアにノービス枠で出場し3位に入った結弦くんに興味を持ち、わざわざメラーノまで見に行ったのだそうです。

2007年の全日本ジュニアではSPは7位でしたが、FSはなんと1位で、ノービスながら3位に入賞しています。開催地は仙台でした。

もうその頃からマッシミリアーノさんの目は羽生結弦の中に天才を見出していたのですね。




それからもう12年になります。

マッシミリアーノさんのユヅル愛は筋金入りなのです。

マッシミリアーノさんとアンジェロさんのお話は本当に核心をついてくるので、小気味いいですね。


それにしても、お二人は羽生選手と直接話したことってあるのでしょうか。

今年トリノのGPFの後、お二人による羽生選手インタビューとかあったらいいのにな。
夢のインタビューです




Nympheaさん、翻訳本当にありがとうございます。


Nympheaはフランス語で睡蓮のこと。(イタリア語ではNimfeaです)

初夏の頃、北イタリアの湖沼地帯に咲く睡蓮のような、凛とした女性をイメージしています。


これからもイタリアならでは記事を楽しみにしています。


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