マッシミリアーノ・アンベージ

2022年05月13日

マッシミリアーノ・アンベージ特別寄稿




1シーズンに1回だけ出版されている『氷上の創造者』、その創刊号からの注目のコンテンツは、なんといってもイタリアのスポーツジャーナリストであり、羽生結弦選手を初めて見た時から現在に至るまで、ずっと高く評価しているマッシミリアーノ・アンベージさんの特別寄稿でしょう。

今回は2つの特別寄稿が寄せられています。

特別寄稿 その1
「新たな清流をもたらすために羽生結弦は必要とされている」

特別寄稿 その2
「フィギュアスケートの変化、懸念される未来」





今回は特別寄稿1を読んで感じたことを書いてみました。


 
『新たな清流をもたらすために羽生結弦は必要とされている』



SP『序奏とロンド・カプリチオーソ』の最初のジャンプ4回転サルコウで起こってしまったアクシデントはマッシミリアーノさんにとってもまた、痛恨の出来事でした。
しかし、それは大会中最も洗練されたショートプログラムであり、あらゆるディテールまで完璧に研究し尽くして作り上げられた唯一のプログラムだったと指摘しています。

もしもあのアクシデントがなく、プログラムが完璧に実施されていれば、北京五輪の結果はどうなっていただろうかという思いは、マッシミリアーノさんも抱いているのでしょう。

現実は変えられない以上、首位から19点差となり、実質的にオリンピック3連覇の可能性が消えた時、羽生選手を北京オリンピックに駆り立てた本当の目標、4回転アクセルをオリンピックという舞台で成功させたいという願望が彼の中で唯一の目標となりました。


しかし運命は過酷にもFSの前日の練習で羽生選手の右足首に酷い怪我を負わせてしまいました。
普通の試合であったなら棄権するレベルの怪我であったにもかかわらず、羽生選手は痛み止めを服用してでも果敢に4回転アクセルに挑み、そしてこれまでで最高に綺麗な軌跡を描いて右足で着氷しました。
転倒し、アンダーローテーションとはなりましたが、ISUにより史上初の4Aとして正式に認定されたのです。


22 北京 4A 放物線



マッシミリアーノさんは、このことについて「4回転アクセルの挑戦は転倒に終わるが、回転はほぼ完成に近く、回転不足の判定は、特に他のスケーター達のジャンプに対する判定を考慮すると、厳格すぎるように思われた」と述べています。


実際、動画で何度も4Aの部分をスローで見返しても、回転はほぼ回り切っているように見え、アンダーローテーションよりもqマークが正当な評価なのではないかと思いました。


「もし(SPで)埼玉の全日本選手権と同じレベルの演技ができたなら、彼は果たしてどこまで到達できただろうかという疑問は残されたままだ。もしそうなっていたら、おそらく我々は別のストーリーを語ることになっていただろう」とも述べています。


これまで、羽生選手ほど運命に翻弄され続けてきたアスリートはいないと思います。
大震災も、事故も、病気も、そして怪我は数えきれないくらい。
しかし起こってしまったことは変えられないのならば、運命を甘受して、それにどう対処すればよいのか、最良の方策を考えてその運命を乗り越えてきたのが羽生選手です。

北京では4位となり、表彰式に現れることもなかったわけですが、北京オリンピックで最も注目され、愛された選手だったと思います。


「羽生が北京に来なければ、冬は浪漫を信じない」。 
(蒼蒼さんのツイートより)



「羽生結弦がフィギュアスケート界にもたらした貢献は、この競技にとって必要不可欠なものであり、彼の功績はこの先数世紀に渡って残っていくだろう」


このマッシミリアーノさんの言葉のように、羽生選手は今、勝敗や点数といったISUが決める順列ではなく、歴史に名を刻むという、より本質的な価値を求めてスケートに身を捧げようとしているように思えます。

22 北京 毎日 貝塚 22



寄稿の最後に、マッシミリアーノさんは、ISUのルールのゆがみと、その疑わしい適用のせいで、徐々に信頼性を失いつつあるフィギュアスケートというスポーツに新たな清流をもたらすために、羽生結弦が寄与することができるだろう。
そのためには羽生選手が卒業論文で示したテクノロジーを活用するところからすべてが始まるだろうと、採点へのAI導入を求めています。

「いずれにしても、まだ氷上であろうと、運営人のトップの立場であろうと、我々は彼を見ていたい。
フィギュアスケートは羽生結弦を必要としているのだ。この事実を理解しないことは、この競技の真価と未来に対する犯罪であり損害である」


おそらくマッシミリアーノさんは、未来において羽生結弦がISUのトップの立場になるべきだと考えているのではないでしょうか。

もしその望みが叶えられれば最高だと思います。

しかし残念ながら、現状を見る限り、羽生選手が濁流渦巻くISUの中心部に入ることなど私には考えられないことですが…


いつの日にか、ISUが清流となり、マッシミリアーノさんの願いが叶うよう祈っています。




お読みいただきありがとうございました。

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2021年11月30日

世界中から愛される存在



GPシリーズが終わって、ようやく落ち着いてマッシミリアーノさんがナポリ国立考古学博物館で行った講演の書き起こしを通して読ませていただきました。

動画に日本語字幕を入れ、さらに全文書き起こしをしてくださったNympheaさんの情熱と献身には本当に感謝しかありません。


L’ALTRO GIAPPONE「トータルパッケージ~羽生結弦に捧ぐ」翻訳書き起こし


製作
L’ALTRO GIAPPONE

協力
ナポリ国立考古学博物館

講演
マッシミリアーノ・アンべージ(M)
(冬季競技アナリスト/ジャーナリスト、ユーロスポーツ解説者)

イントロダクション
バルバラ・ワシンプス(B)
(L’Atro Giappone芸術監督)

寄稿ビデオ
キアーラ・ギディーニ(C)
(ナポリ東洋大学「東アジアの宗教及び哲学」学科教授)

寄稿
カーティア・チェントンツェ(K)
(ヴェネツィア・カ・フォスカリ大学アジア研究学部教授、早稲田大学講師、舞台芸術研究者)


マッシミリアーノさんの講演を読む前に、L'Altro Giappone 芸術監督のバルバラ・ワシンプスさんのイントロダクションを読み始めたところで、もう鼻の奥がツーンとして、涙がしたたり落ちてきてしまいました。

一部だけ引用させていただきますが、あくまでも断片的な引用ですので、
全文は是非とも「惑星はニューへようこそ」で読んでいただきたいです。



外国特派員クラブのピーター・ランガンは、2018年平昌五輪後に行われた羽生結弦の会見の冒頭で、彼に注目している私達全員にとって非常に印象的なことを言いました。
彼はフィギュアスケート専門のジャーナリストではありません。
普通のジャーナリストなら誰でもそうですが、次から次への飛び込んでくるフェイクニュース、事実の捏造、真実の改ざんにまみれて1年を過ごした後、彼はオリンピックでの羽生の演技を見て衝撃を受けました。
そして自分自身に向かってこう言ったのです。「これが真実だ」と
彼は続けます。「多くの真実、美、芸術があった。これはAntidote (解毒剤)だ。このレベルの卓越への到達を求め続ける彼の渇望はAntidote、すなわち真実である」

こうなると、自然に解毒剤や治療としての「美」について語りたくなります。
10年前に起きた大惨事や現在のパンデミックのような状況において、芸術は文化資産であり、美は人間の資産なのです。


天性の才能を磨き上げるための彼の包括的な軌跡は、常に努力、断固たる意志、完璧の追求を伴ってきました。この意味において、羽生結弦の『フィギュアスケート道』と定義出来たら素敵ですが、フィギュアスケートは西洋のスポーツですから、東洋の修行のように~道(どう)を付けることは出来ません。しかし、数人かの日本の友人と話して『羽生道』、つまり「羽生のフィギュアスケート道」と定義出来るのではないかという結論に達しました。



つまりアーティスト結弦はあらゆる次元で話すのです。複数の身体表現を同時に使用しながら、絶対的熟練によって全てを支配しているのです。
この意味で究極に達した例を時系列に挙げると、
私達がこれ以上はないだろう思う度に、このアーティストは更にその上を行くのです。

最近も2020年年末に「天と地と」というプログラムでこのようなことが起こりました。
日本のテレビドラマ、大河ドラマの主題曲を使ったプログラムでした。



羽生に注目している私達にとって、彼はフェノメノ(超常現象)です。フェノメノという言葉だけで既に鳥肌を覚えますが、彼は実在するフェノメノであり、彼の影響と効果は無視することは出来ません。



ポジティブな意味での「羽生現象」は心の内にある親日家の新世代を生み出しました。他のジャンルのアジアンスターによって起こる現象に少し似ていますが、若者達またはそれほど若くない人々が日本語や日本文化の勉強を始め、同時に大衆向けのステレオタイプに捉われないようにします。何故なら、すぐに理解出来る、分かりやすいキャラクターは、通常アニメのキャラクターや芸能人を偶像化する人達によって作り上げられた大衆向けのステレオタイプに過ぎないからです。このようなステレオタイプは羽生とは何の関係もありません。
しかも、彼の巨大な影響力は日本国内に留まらず、何度も言いますが、地球レベルなのです。
ソーシャルを一切やっていないにも拘わらず。

羽生結弦は一切発信せず、公式の発言以外、一切発言しないのです。
自国の大衆と全く交流することなく、これほどその一挙一動が注目されている日本人は他に誰も思い浮かびません。

何故なら、羽生はある種の修行僧に近い人物で、有害な過度の露出を避けているからです。実際、露出オーバーになる度に、羽生結弦が損害を被ることがしばしば起こるからです。



イントロダクションに続いて、マッシミリアーノ・アンべージさんの講演が始まるのですが、
それはひとつの羽生結弦の物語になっていて、一部を切り取って引用することは不可能なくらい途切れなく続いていきます。


それで、なぜマッシミリアーノさんがこの講演に『トータルパッケージ』というタイトルを選んだのかという理由だけ引用させていただきました。


皆さんはタイトルを見ましたか?
「トータルパッケージ」とは?
私の解説を聴いてくれている人は知っていると思いますが、私は英語を使うのをあまり好みません。
フィギュアスケート用語の原語は全て英語ですが、イタリアの視聴者の皆さんに向かって話す時は、常にイタリア語の用語を使った方がいいでしょう。
本来なら「Pacchetto Completo」(トータルパッケージのイタリア語)と命名すべきでしたが、それではまるでツアーオペレーターのメッセージのようです。
ですから、我々の国内だけに留まらない選択をしました。
それにフィギュアスケートは世界レベルの競技です。
それで我々はこの「トータルパッケージ」というタイトルが気に入りました。
何故なら、根本的に羽生がトータルパッケージだからです。
しかし、彼はただのアスリート、またはスケーターがそうあるべきであるトータルパッケージではありません。人間としても。
このテーマについても掘り下げる時間があることを願っています。


イタリア語で「Completo」という言葉には、「完全な、完璧な」という意味が強いですから、個人的には英語で「Total」と表記すよりも、「Pacchetto Completo」の方が、一層、羽生結弦の人間としての存在も含めた完全性を表しているように感じました。



ここから延々とマッシさんの羽生語りが始まります。

長いですが、一気に読んでしまいました。
動画もよいですが、文字で読むと、読み返したり、じっくり文章を味わったりできて良かったです。

Nympheaさん、本当にありがとうございます。



動画はYoutubeでご覧ください。




1時間半余りの長さがあります。
お忙しい方は何回かに分けて視聴するのもよいと思います。
是非ご覧くださいね。




さて、GPシリーズが終わて一段落して、一番記憶に残っているのはロステレコムで現地のファンの方々が見せてくれた羽生選手応援活動でした。素晴らしい団結力と実行力に敬服しました。


「ハニュウのファンは群を抜いていた」本人不在でも際立つ存在感!ロシアGPでのサポートに露メディアが賛辞

THE DIGEST編集部

2021.11.30 

21 DIGEST 記事


フィギアスケートのグランプリ(GP)シリーズ第6戦、ロシア杯は現地11月28日にエキシビションが行なわれ、全日程を終えた。男子では日本勢の友野一季が自己ベストの合計264.19点で3位に入るなど、来年2月の北京五輪代表入りへアピールした。

 今大会では当初、五輪2連覇中の羽生結弦もエントリーされていたが、右足首の負傷で欠場となった。今季、ここまでその姿をリンクで観ることが出来ず、本人はもちろん、世界中のファンにとってももどかしい状況が続いている。

 だが、ロシア杯が行なわれたソチの会場では、多くのファンからの羽生への様々なアクションがあったようだ。

 ロシアメディア『sportsdaily.ru』では、ソチの会場内に羽生を応援するための横断幕が掲げられていたことや、お馴染みの「くまのプーさん」が画かれた、200本にも及ぶ旗があったことを伝えている。

「ハニュウのファンは、ソチGPの舞台で最も明るい応援を用意した」と銘打たれた記事の中では、地元の羽生ファンが発起人となり、SNSなどで呼びかけ希望者より寄付を募るなどして、羽生の表情が画かれた断幕や、「くまのプーさん」の子旗を作成したと綴られている。
もちろん、大会前に欠場のニュースはすでに流れていたものの、「(不在でも)どうしても彼を応援したい」という意思から始まったことであると述べており、他にも「ユズをサポートすることで、フィギュアを愛しているという事実を団結という形で示したかった」とのコメントも紹介されている。


 同メディアは「くまのプーさんの登場により、ソチグランプリの舞台は赤と黄色で輝き、フィギュアスケートファンにとって真の祭典となった」として、地元ファンの活動を讃えており、その上で「競技を繰り広げたスケーターへの多くの応援もあった中で、ハニュウのファンはその中でも群を抜いていただろう」と本人不在の大会でも、羽生への応援の熱量が高かったと強調した。

 羽生は12月22日からの全日本選手権にエントリーしており、出場すると今季の初戦となる。回復状況にもよるものの、待ち焦がれているファンの前で、その滑りを披露してくれることを期待して待ちたい。

構成●THE DIGEST編集部


研究者であれ、ファンであれ、世界中から愛されている羽生結弦ですが、それには訳がある。

それがよく分かったマッシミリアーノさんの講演であり、ロステレコムでの現地のファンたちが示してくれた応援でした。


今日から12月、結弦くんの27歳の誕生日は1週間後ですね。

今年はご家族そろっての静かなお誕生日を過ごせますように。

世界各地で、ファンたちが一緒に祝うでしょう。



今日は結弦くんをこよなく敬愛している佐藤駿選手の『KENJIの部屋・エピソード3』の初放送があります。
最終回は2019年GPFに一緒に出場した時の思い出を語ってくれるそうです。

どんなエピソードが聴けるのか、楽しみです。




お読みいただきありがとうございました。

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2021年09月25日

ナポリのジャパンウィークで





イタリアのエレナさんから、素敵なお知らせが届いています。

10月3日(日)イタリア・ナポリで、
”The Total Package” 羽生結弦礼賛

ライブストリーミングは見られないが、後に講演内容は公開される予定。
 





ナポリ考古学博物館で、L'ALTRO GIPPONE(もう一つの日本)と題したジャパンウィークが催され、
その企画の一つに羽生選手が取り上げられます。
しかも、講師はあのマッシミリアーノさんです。

THE TOTAL PACKAGE:TRIBUTE TO YUZURU HANYU

Data / Ora

3 Ottobre 2021

L’ Uomo, il Campione, l’Artista, la Superstar.
Tributo al più grande pattinatore artistico di tutti i tempi, Yuzuru Hanyū, condotto da una notissima voce del panorama sportivo non solo italiano, Massimiliano Ambesi, in cui verrà illustrato attraverso contenuti video lo stoico percorso di Hanyū, da giovane atleta di Sendai sopravvissuto allo tsunami a leggenda vivente dello sport, vincitore di 2 ori olimpici consecutivi, capace di elevare la disciplina a livelli estetici e tecnici mai raggiunti prima.



【トータルパッケージ:YUZURU HANYU 礼賛】

2021年10月3日

一人の男性であり、チャンピオンであり、アーティストであり、スーパースター。

イタリアのみならず、広くスポーツ界で名をはせるマッシミリアーノ・アンベージ氏の解説により、
ビデオを通じて、
史上最高の偉大なフィギュアスケーター羽生結弦の歴史的な軌跡を振り返り、
彼へのオマージュを捧げる。


仙台出身の若きアスリート羽生結弦は、津波を生き抜いた伝説的人物であり、2回連続のオリンピック金メダリストであり、これまでに誰も到達したことのない美的、技術的レベルにスケートの規範を高める能力を持っている。



マッシさんの固定されたツイート ⇓



The Best There Is,
The Best There Was
and The Best There Ever Will Be

正にこの通りですね。



素晴らしい収蔵品でいっぱいのナポリ考古学博物館はナポリで一番好きな場所です。

そこで開催される日本ウィークで、マッシミリアーノさんが羽生結弦選手について講演するとは、なんて素敵な企画でしょうか。

是非とも聞きたいですね!

終了後に視聴可能となるのことです、

楽しみ過ぎる~~~


他には、坂本龍一さん、是枝裕和監督、坂東玉三郎さんなどが取り上げられています。

羽生結弦選手は、今や現代日本文化を代表するアイコンの一人ですね。



お読みいただきありがとうございました。

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