デイヴィッド・ウィルソン
2018年08月23日
才能は細部に宿る
ジャック・ギャラガーさんによるデイヴィッド・ウィルソンさんインタビューが話題になっていますね。
素早い翻訳作業に感謝しながらsiennaさん、きゅーさんの翻訳を読ませていただきました。

その中からいくつか特に感銘を受けた部分をピックアップしてみます。
太字は翻訳から引用させていただいた部分です。
「ソチ五輪年を迎えて曲を選ぶことになり、僕らはその前の年に一緒に仕事をしたが、彼はもうロミオとジュリエットにすると決めていた。僕にびっくりするようなメールを書いてきてね。それはどんなに彼が五輪の勝利を欲しているかという、紛れもない宣言だったよ」
「僕はそれまでそんな純粋さや激しさに出くわしたことがなかった…それは欲望を超えたものだったんだ。完全に超えていた。もっと強力な命令などありえないほどに」
「五輪王者になるのに次の五輪まで待てません。今、チャンピオンになりたいんです。そのためにはなんでもします。だからお願い、お願いだから助けてください。そう彼は書いてきた」
目標を定めた時の羽生選手の一途な気持ち、相手が誰であれ物怖じすることなく目標達成のために突き進んでいくところがよく表れているエピソードです。
見た目は甘い感じでも、デイヴィッドさんが言うように中身はサムライでありトラであるというのは良く分かります。
ソチで『ロミオとジュリエット』を演じて金メダルを取るというのは、結弦君にとって自らに課した至上命令だったんだなぁと、改めて思いました。
それは勿論2012年のもう一つの『ロミオとジュリエット』と対にになるべきもので、プログラムはそれでなければならなかったのでしょう。
ソチで勝てて、金メダルを故郷に持ち帰れて、本当に良かったね!

「その(2013/14シーズン)後、競技プロに関しては一緒に仕事をしていなかったが、僕は彼の進化を見守っていた」とウィルソン。「彼のためにエキシビションプログラム(複数)を作り、すごく気に入っている。僕は両方のいいとこ取りをしてるんだ」
ソチのFS、「ロミオとジュリエット」を最後に、競技プロはジェフリー・バトルさんとシェリーン・ボーンさんが担当していますが、限りなく美しい「ノッテ・ステッラータ」と「春よ来い」はデイヴィッドさんの振り付けです。
デイヴィッドさんの芸術的で抒情的な振り付けが結弦君の繊細な表現と合体した時のインパクトは強烈です。

「すごく意味深長な間の取り方だったり、なんでもない瞬間を忘れがたいものにできるんだ。彼自身それを感じているからできること。それに体の動きは猫のようだ。彼には、できないことが一つもない」
一瞬の指先の動き、視線の動かし方、スケーティングの微妙な溜めや緩急のつけ方、これはどんなに難しいジャンプを優等生的に正確に跳んだとしても、誰も羽生選手の芸術的な域には届かない理由です。
それこそ天賦の才能であり、持って生まれたセンス。
それはまた彼の感情の表出でもあるが故に、誰も真似することはできないのです。
「 春よ来い」について、
「彼はあの曲にとても思い入れがあった。ホテルの部屋で何時間も曲の全てのニュアンスを細い目の櫛でとかすように細かく確認していた。そして3回彼がそれを演じるのを観たけれど、もう信じられないくらいだった。月曜に振りつけて、金曜には演じていたんだ。」
結弦君が鏡の前で何度も動きを確認してプログラムを仕上げる様子が目に浮かびます。
まるで夕鶴の主人公つうが、一人きりで部屋に閉じこもって自らの羽で織物を織るように。
そして出来上がった素晴らしく美しい輝く反物を惜しげもなく私たちに差し出してくれるのです。
私たちはそれをリアルタイムで受け取れるという幸運に恵まれているのです。
きゅーさんが残りの部分も含め全訳して下さっています。
ヨナさんのこと、クリケットクラブに移ったメドベジェワ選手のこと、振付師の色々な事情等々、とても興味深い内容でした。
デイヴィッドさん、良い時も悪い時も、いつもありがとうございます。

2013年世界選手権の結弦君とデイヴィッドさん。
これからも結弦君のこと、よろしくお願いします。
ブログ訪問ありがとうございます。
フィギュアスケートランキング
ブログランキングに参加しています。1クリックが励みになります。
☆全ての画像、文の転載、引用はご遠慮下さい。