2023年03月05日
阿修羅ちゃん
話題になっている「阿修羅ちゃん」の振付については、武部さんと結弦くんの間でこんなやり取りがあったのですね。
今週は僕のラジオ番組全国で羽生結弦東京ドーム公演を振り返った特集がオンエアされます。その中で僕の認識不足で間違った情報を話してしまっていたようです。
— 武部聡志-TAKEBE SATOSHI- (@takebesatoshi) March 4, 2023
ここに謹んでお詫びします。羽生くんゴメン‼️羽生結弦がいかに桁外れか、音楽的か、を伝えたかっただけなのでした。#羽生結弦#GIFT
武部さん…!そんな、謝らないでください…!😭
— 羽生結弦official_Staff 公式 (@YUZURUofficial_) March 4, 2023
拙い振り付けがMIKIKO先生の振り付けになってしまったら、MIKIKO先生に申し訳なさすぎて…
またいつか、武部さんと共に創っていけることを楽しみにしております!
羽生結弦#武部聡志 様#MIKIKO先生#GIFT_tokyodome https://t.co/hBut9SrnxR
イレブンプレイさんの振付にも合っていたので、私もMIKIKO先生の振付なのかなと思っていました。
武部さんの思い込みから、思いがけず、それが結弦くん本人によるセルフコレオだったことが明らかになりましたね。
二人のやり取りがほのぼのしていて、武部さん、結弦くん、そしてMIKIKO先生の良い関係が垣間見えたように思いました。
羽生結弦 阿修羅ちゃん pic.twitter.com/VsdFBwRDSw
— 愛弓 (@origin1207) February 27, 2023
Adoさんの「阿修羅ちゃん」という曲は初めて聴いたのですが、私にとっては「阿修羅」といえば、
この像以外に思い浮かびません。
「天平の美少年」とも称される美しい像です。
(過去記事より)
阿修羅は、梵語のアスラからきていて、生命を与える者という意味を持つそうです。
また、ペルシャなどでは大地に恵みを与える太陽神としても信仰されていたようです。
更に仏教においては戦いの神とされています。
私はこの強さを内に秘めながら、美しく凛々しい佇まいの阿修羅像が大好きです。
それはまた、羽生結弦選手にも共通するもののように感じます。
因みに興福寺の阿修羅像は西暦711年頃の作とされ、現存する最古のもので、国宝です。
羽生結弦選手も生ける『国宝』です。それも共通点。
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では何故、この曲に「阿修羅ちゃん」というタイトルが付いているのでしょう。
それには何か意味があるに違いありません。
長くなりますが、この曲の歌詞の解説を読んでみてください。
2021年10月28日に配信リリースされたAdoの自身7曲目となる最新オリジナル曲『阿修羅ちゃん』は、米倉涼子主演のテレビ朝日系ドラマ『ドクターX~外科医・大門未知子~』第7シリーズの主題歌に起用されています。
作詞作曲を手がけたのは、『ロストワンの号哭』『東京テディベア』『脱法ロック』など数々のヒット曲を手がけてきたボカロPのNeruです。
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ねえ、あんたわかっちゃいない
≪阿修羅ちゃん 歌詞より抜粋≫
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強烈なインパクトを残すこの言葉の「あんた」とは誰なのか、何を「わかっちゃいない」のかを続く歌詞から徹底解釈していきましょう。
----------------「お手元の世界」とは、今や世代を問わず利用されているスマートフォンのこと。
誰それがお手元の世界に夢中 化け物の飼い方を学んでる
選ばれる為なら舌を売る 裏切られた分だけ墓を掘る
≪阿修羅ちゃん 歌詞より抜粋≫
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誰も彼もが、いつでもどこでもスマホを通してネットの世界に夢中になっています。
その中で飼い方を学ぶ「化け物」は、いくらでも広がるネット上の付き合いや制御しきれない自分の感情など、そんな扱いづらいもののことなのかもしれません。
平凡な人の中に埋もれたくなくて、地位を確立するためなら自分の意見なんてすぐに捨ててしまえる人がいます。
そうする方が生きやすいように見えて実は、信念がないせいで周囲には利用され、甘い話に飛びついては裏切られ、窮地に陥ってしまう人も多いでしょう。
そうした人たちは、飼い慣らそうとしていたはずのものに逆に飼い慣らされているのです。
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へらへらのおつむがどうにかして うすら寒い言葉ばかりになる
覚えない顔とバイバイできるなら 阿修羅にだってなれるわ
≪阿修羅ちゃん 歌詞より抜粋≫
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「おつむ」は頭や知能を指す言葉なので、おそらく「へらへらのおつむ」とはへらへらと笑ってばかりいる頭の悪い人のこと。
自分で考えることをせず他人に媚びているので、その人の発言は誰にも響かない「うすら寒い言葉ばかりに」なります。
「阿修羅にだってなれるわ」とあることから、タイトルの「阿修羅ちゃん」は主人公のことだと分かるでしょう。
阿修羅はインド神話の戦闘を好む鬼神で、善の神と対立する悪神と言われています。
顔も名前も知らない誰かを気にして生きるのがこの世の中の常識なら、自分は悪役になってでもそのルールに逆らって生きていきたい、という今の社会への反骨精神を表しています。
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逃げるえすけいぷえすけいぷえすけいぷ 仏のまま
飛べるすてっぷすてっぷすてっぷ 仰せのまま
アンダスタン アンダスタン どーどー閻魔様さえ喰らって
騙るすにーくすにーくすにーく 嵐の中
跳ねるすきっぷすきっぷすきっぷ あっそ、へのかっぱ
アンダスタン アンダスタン いっそ骨の髄までしゃぶって
ねえ、あんたわかっちゃいない
≪阿修羅ちゃん 歌詞より抜粋≫
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サビの歌詞はさらにユニークな表現のオンパレードです。
「えすけいぷ(escape)」と繰り返すのは、ネットに依存する世の中と決別しようとしている姿を意味しているのかもしれません。
「飛べるすてっぷすてっぷすてっぷ 仰せのまま」のフレーズは、自分を蹴落とそうとして周囲が押しつける無理難題をステップを踏むかように軽く処理している様子を描いていると考えられます。
その様子は、悪意を物ともせず難しい手術を華麗にやってのけるドクターXの主人公、大門未知子の姿と重なりますよね。
一般的な考え方とは逆行しているように思えますが、揺らがない意思を持って行動する姿はかっこよく見えます。
次に出てくる「閻魔様」は死後の世界を支配し、人の生前の罪を裁く冥界の王です。
世間に対立することが罪と見なされるのであれば、閻魔様にさえ喰らいついてとことん歯向かってやろうという考えが伝わってきます。
続く「すにーく(sneak)」は「卑怯者」のこと。
長いものに巻かれる卑怯者たちが言いふらす嘘の「嵐の中」でも、「あっそ、へのかっぱ」と陽気にスキップして見せる堂々とした態度が痛快です。
「アンダスタン」のフレーズはMVでは「UNDERSTAND?」や「UNDERSTAND!!」と描かれているので、「分かってるの?理解しなよ!」と言っているように感じます。
こうした言葉の数々を読み解くと、シャウトされる「ねえ、あんたわかっちゃいない」の意味が見えてきます。
「あんた」は世の中の常識に囚われている人たちのことで、本当に大切にするべきことを分かっていないと物申しているのではないでしょうか。
----------------「日々の滲み」とは、おそらく日常の中で募る鬱憤のことでしょう。
日々の滲みを木々に焼べて暖をとり合う
義理を誣いた彼の四肢は散り散りになる
知りもせずに意味を美意識だと崇める
擬似餌じみた恣意に御の字だった
≪阿修羅ちゃん 歌詞より抜粋≫
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ある人たちはその鬱憤を晴らすため、何か標的を見つけてはネット上で攻撃して炎上させ、悪いのは自分じゃないと自身を安心させて毎日をやり過ごしています。
「誣いる」という言葉は、相手を陥れるために事実を曲げて嘘を言うことを意味しています。
つまり「義理を誣いた彼」は人が行うべき道理を捻じ曲げている人を差し、そうした間違ったことをする人は悲惨な結末を迎えるということを表していると考えられそうです。
権力者の発言とあれば意味を知ろうともせずに「美意識だ」「これが最善だ」と崇めている人たちも少なくありません。
「恣意」は勝手気ままな考えのことなので、権力者が私利私欲のためにする発言のことと捉えられます。
周囲の人はそれを「疑似餌」とも知らず、自分がのし上がるために利用できると考えて従いますが、結局は何の利益も得られず権力者の手の中で踊らされているのです。
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愉快な御託のフルコースに うわべの面をして可愛がった
くだんない僧と踊るくらいなら 悪魔と手繋ぐわ
≪阿修羅ちゃん 歌詞より抜粋≫
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御託を並べてうわべだけの付き合いをするのが正しいことのような顔をして、腹を探り合っている人たちのことを、ここでは「くだんない僧」と表現しています。
自分のことばかり考えて人間の本質を見ようとしない人たちとの化かし合いに加わるくらいなら、いっそ悪魔の側に堕ちる方が清々しい。
主人公の、世間の在り方に真っ向から勝負しようとする姿勢が垣間見えますね。
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逃げるえすけいぷえすけいぷえすけいぷ 仏のまま
飛べるすてっぷすてっぷすてっぷ 仰せのまま
アンダスタン アンダスタン 阿鼻地獄の果てまでロックオン
騙るすにーくすにーくすにーく 嵐の中
跳ねるすきっぷすきっぷすきっぷ あっそ、へのかっぱ
アンダスタン アンダスタン あんた寝言はあの世で言って
≪阿修羅ちゃん 歌詞より抜粋≫
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2番のサビも基本的には同じフレーズが続きますが、「阿鼻地獄の果てまでロックオン」のフレーズでは、どこまでも我が道を突き進んでやるという主人公の決意の強さが表れています。
さらに、自身の考えを間違っていると嘲笑う世間の人たちに「寝言はあの世で言って」と言い捨てるところもクールです。
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逃げるえすけいぷえすけいぷえすけいぷ 仏のまま
飛べるすてっぷすてっぷすてっぷ 仰せのまま
アンダスタン アンダスタン 阿鼻地獄の果てまでロックオン
騙るすにーくすにーくすにーく 嵐の中
跳ねるすきっぷすきっぷすきっぷ あっそ、へのかっぱ
アンダスタン アンダスタン あんた寝言はあの世で言って
≪阿修羅ちゃん 歌詞より抜粋≫
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最後に歌われるこのフレーズも印象的です。
「頭を垂れる」とは相手にへりくだる時に使われる言葉なので、誰かが主人公に頭を下げて敬意を示している様子が感じ取れます。
この曲の主人公も大門未知子も権力を持つことに興味はなく、ただひたすらに自分の信念や目の前の助けるべき患者を大切にしています。
ポリシーを貫いてやるべきことをし、必要のないことは一切の妥協なく突っぱねる。
周囲のどんな声にも惑わされず自分が信じる道を確実に歩いていく姿に、胸がスカッとしますね。
音楽を通して世間への問題提起や反骨精神を訴えかける、令和を代表するアーティスト・Ado。
『阿修羅ちゃん』も周囲に流されてつまらなくなっている世の中にメスを入れる、爽快感バツグンの楽曲です。
(UtaTenより抜粋)
ここまで読めば、なるほど、そういう意味で「阿修羅ちゃん」なのか、と納得しました。
「阿修羅ちゃん」は、結弦くん自身の投影のようでもあります。
この曲を選んだということは、そういうことだろうと思います。
結弦くんは自分のプログラムに意味のない曲を選んだりはしないから。
意味を理解して結弦くんの華麗なパフォーマンスを観ると、また一層カッコよいですね。
天平の美少年・「阿修羅」と、現代の美青年・羽生結弦が演じる「阿修羅ちゃん」。
凛々しい姿も、そのスピリットも、共通するものがありますね。
お読みいただきありがとうございました。
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