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2022年07月15日

Pattinaggio Artistico 芸術的スケート





『惑星ハニューにようこそ』のNympheaさんの翻訳記事です。
いつも素晴らしい翻訳をしてくださりありがとうございます。



最初に、「エレガンスと姿勢」というタイトルにドキッとしました。

PCやスマホに向かう時、どうしても前かがみになって猫背になってしまうからです。


いつもながらマルティーナさんの記事の内容もとても興味深く読ませていただきました。
 

久々にノンフィクション作家で雑誌記者のマルティーナ・フランマルティ―ノさんの記事です。

PCSの評価基準の一つである「エレガンスと姿勢」と言う観点から、北京オリンピック男子シングルにおける4人の選手のショートプログラムを分析しています。



この後の長い分析記事の部分はここでは割愛させていただきますが、是非とも『惑星ハニューへようこそ』で全文をお読みください。
とても興味深い記事です。

ここでは記事の最後の部分だけ引用するに留めますが、
マルティーナさんは、ネイサン・チェン選手、鍵山選手、宇野選手、羽生選手のジャンプ前のトランジションを画像を追って分析し、以下のように結論付けています。



エレガンスと姿勢 1


プログラム全体におけるトランジションの難度、質、数を考慮せず、スケーターがどのように加速しているか、という点だけに注目しても、チェンのPCSスコアは全く正当化出来ません。羽生の動作は、彼が加速するのに忙しい瞬間でさえ、鍵山や宇野の動作よりずっとクオリティが高く、同様にチェンよりもクオリティの高いジェスチャーを実行出来ています。PCSの評価には深刻な問題があると言わざるを得ません。



そして私が今回特にご紹介したかったのは、記事のあとがきのように、Nympheaさんがお書きになっている部分です。


マルティーナさんは超人的な執筆ペースで北京オリンピックの男子シングルの試合における採点を各選手、各ジャッジ、ルールやガイドラインが定める各基準といったあらゆる観点から分析しており、その精密さたるや、外科手術並みです。この記事はほんのイントロダクションに過ぎず、これに続くもはや数10本に上る記事はいずれもこの記事の2倍から3倍の文字量です。

私は北京オリンピック男子フリーの羽生君以降の選手は未だに見ておらず、北京オリンピックに関しては羽生君以外、あまり見たくないし、正直思い出したくもなかったので、マルティーナさんの膨大な力作も翻訳していませんでした。しかし新シーズンが始まり、羽生君が現役を続行する、ということなので、少しずつ訳していければと思います。

最近のISU総会で演技構成点から「トランジション」と「音楽の解釈」が削除されることが決定しました(予算がひっ迫しているはずの組織が、何故かプーケット島の高級リゾートでどんちゃん騒ぎしながらの総会だったそうで、本来なら役職から締め出されるべきロシアのラケルニク氏も出席していたとか。ISUは真面目にやる気があるのでしょうか?)。

この決定について、ヨーロッパのフィギュアスケートファンは「ISUはフィギュアスケートを殺してしまった・・・」と嘆いています。

ISUはこの競技が何故「Figure Skating」と命名されたのか忘れてしまったのでしょうか?
エッジで氷上に描かれる図形からこのような名前で呼ばれるようになったはずです。
フィギュアスケートにとって最も重要な核は本来、ジャンプでもスピンでもなく、スケーティングスキルだったはずなのに、そのスケーティングスキルの高さが最も求められるトランジションを排除してしまうとは、一体何を考えているのでしょうか?

そして、フィギュアスケートはイタリア語、ドイツ語、フランス語、スペイン語などのラテン系の主要な言語では芸術的スケートと呼ばれています。芸術的なスケートである上で、「音楽の解釈」は必要不可欠だと私は思うのですが、ISUにとってはそれほど重要ではないのでしょうか。

今回の改正でポジティブな点は、シークエンスジャンプの得点がコンビネーションジャンプ同様、各ジャンプの基礎点がそのまま100%カウントされるようになったこと、そして過度のプレロテジャンプにペナルティが与えられるようになったことです。
しかし、プレロテルールに関してはジャッジが実際に試合でどのように適用するのかを見なければなりません。シリアスエラーのように、選手によって適用されたりされなかったりするのでは全く意味がありません。

ジャッジは「選手が誰か」に関係なく、純粋に氷上で回転している角度だけを見て判定するべきです。
それが出来ないのならAIにお任せすべきです。



実際、英語ではFigure Skating と呼ばれていますが、

イタリア語ではPattinaggio Artistico
フランス語ではPatinage Artistique
スペイン語ではPatinaje Artistico
ドイツ語ではEiskunstlauf
と呼ばれていて、全て英語のArtistic に相当する言葉で表現されています。
私は英語でも本来はArtistic Skating と表記しても良いのではないかと思っています。


Nympheaさんもご指摘の通り、フィギュアスケートには「音楽の解釈」が必要不可欠ではないでしょうか。
たとえば、もしもフィギュアスケートの競技では音楽を使用しないとしたら、どうなのでしょう。
ただ単に氷の上でジャンプやスピンの技術を競うだけの平凡で無味乾燥な競技になってしまうでしょう。

そこに音楽があるからこそ、選手にとっても、観客にとってもフィギュアスケートは特別な感動を呼び起こす競技なのだと思います。



今年のFaOIを見た後では、
羽生選手は自らの追い求める、芸術的であり、かつ最高難度の技術を兼ね備えたフィギュアスケートを、もう何にも誰にも遠慮することな実現するために、全力で立ち向かって行く気なんだと思いました。

それが紛れもなく羽生結弦の「レゾン・デートル」だからです。


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(このポーズ、『天と地と』と同じですね!)



そういう意味で、今シーズンも「羽生結弦」から目が離せません。
どうかケガ無く、このシーズンも結弦くんにたくさんの栄光と幸せが訪れますように。




 同じく『惑星ハニューへようこそ』の最新記事の三原舞依選手の「ミッション」についての記事も是非お読みください。
「ミッション」の作曲者であるエンニオ・モリコーネの命日にちなんで、マッシミリアーノさんが執筆された感動的な記事です。



お読みいただきありがとうございました。

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withgoldenwings at 14:05│羽生結弦 
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