マッシミリアーノ・アンベージ特別寄稿コロンブスの卵

2022年05月14日

バレエとフィギュアスケートの融合『ロンド・カプリチオーソ』




『氷上の創造者』掲載の特別寄稿の中で、マッシミリアーノさんは羽生選手のショートプログラムについてこのように書かれていました。

『序奏とロンド・カプリチオーソ』は、大会中最も洗練されたショートプログラムであり、あらゆるディテールまで完璧に研究し尽くして作り上げられた唯一のプログラムだった。

並外れたステップシークエンスが証明しているように、全ての音、全てのアクセントが最大限まで引き立てられていた。


まだ観るのが辛い気持ちはあるけれど、たとえ4Sが抜けてしまっても、その後の演技には一糸の乱れも感じさせない限りなく美しい演技でした。


小海途 5




精緻なガラス細工のようなこのプログラムについて、作家でバレリーナのアレッサンドラ・モントルッキオさんがバレエの観点から詳細に分析された記事が、Nympheaさんのブログ「惑星ハニューにようこそ」に掲載されています。

羽生選手のフィギュアスケートの技術・表現が、バレエと如何に共通するものなのか、とてもよく理解できました。
一部抜粋してご紹介しますが、全文は是非「惑星ハニューにようこそ」でお読みください。

長文を翻訳してくださったNympheaさんに心より感謝いたします。


EleC’sWorldより「BalleticYuzu09~ロンカプと新しい分野」


作家でバレリーナのアレッサンドラ・モントルッキオさんがバレエ的観点から羽生君のプログラムを分析するシリーズ。
第9弾の今回は北京オリンピックにおけるロンド・カプリツィオーゾのジャンプの出について詳しく解説して下さっています。

原文はエレナさんのブログに掲載されています。
BalleticYuzu 09 – 3A e 4T+3T nel Rondò Capriccioso di Pechino 2022 (elecsworld.com)






アレッサンドラ・モントルッキオ(2022年5月9日)
私達全員にとって北京オリンピックのロンド・カプリツィオーゾを見返すことは、心の痛みです。氷上のあの穴と、そのためにシングルになってしまったサルコウは、ユヅと私達にとってオリンピックの夢が終わったことを意味していました。(独り言:埼玉世界選手権はスキャンダルでした。しかし、ダブルになったサルコウが0点になるというショートプログラムにおける全く同じ問題の後、ユヅは北京のような8位ではなく、3位でした。そして金メダルを狙うライバル達からこれほどの点差で引き離された彼を彼らがフリープログラムで勝たせることは絶対になかったでしょう。例え4サルコウで転倒しなくても、そしておそらく4Aを綺麗に着氷し、クリーンと認められたとしても・・・独り言終わり)


このアクシデントは彼の魂、そして肉体(この後で、彼は再び足首を負傷するのです)を苦しめ、今までになく悩ませることを意味していました。北京から未だに立ち直っていない私達にとって、このように苦しむユヅを見るのはとても辛いことなので、ユヅが完璧な演技で世界中に己の能力を見せつけた全日本選手権のロンカプの方を鑑賞したくなります。

しかし、北京のロンカプを見直すことは、意味があるだけでなく、非常に重要なことでもあるのです。なぜなら、シングルになったサルコウの持つ重い意味にも拘わらず、ユヅは一糸の乱れもなくこのプログラムを滑り切ったからです。そして幾つかのパッセージは全日本選手権より密度が濃く、崇高で比類のない彼のフィギュアスケートとクラシックバレエの並外れたスキルが凝縮されたもう何度目か分からない演技であったばかりでなく、私の意見では、私達は新しい分野の誕生に立ち会ったのです。

(中略:羽生選手の演技のバレエ的な要素について詳しく解説されています。)

「新しい分野の発明」

これは非常に強い主張であり、私にはそれが分かります。例え、何者でもない私には確信を持って主張することは出来ないとしても。私はクラシックバレエについてはかなりの知識がありますが、フィギュアスケートに関してはそうではなく、他の専門家と意見交換する機会を持つ専門家でもありません。
しかし私はそう感じるのです。ユヅは彼のフィギュアスケートの中でダンス(主にクラシックバレエですが、それだけではありません)の動作、ステップ、ポジションを重要視していると。
私は大分前からそのこに気付きましたし、誰もが随分前からそのことを知っています。ショパンのようなプログラムを見れば明らかです。そしてユヅには並外れたバレエダンサーの素質が備わっています。

しかし、ロンカプではユヅはただ前進しただけでなく、境界を超えて更にその先に行ってしまったと感じました。もはやフィギュアスケートではありません。私達はフィギュアスケートとバレエが融合した新しい芸術を見ているのです。

(中略)

結論から言うと、ロンカプはただフィギュアスケートに新たな清流を吹き込んだだけでなく、もっとずっと大きな意味を持つプログラムなのです。すなわち、ロンカプは未だかつて見たことのないもの、元の2つの分野において卓越した能力を持つ人でなければ絶対に到達出来ない、複雑で崇高な芸術の誕生を意味しているのです。

ユヅはトロントでの数カ月以外、バレエを習ったことはないと言っています。あり得ないことのようですが、彼が言うのならそうなのでしょう。しかし、間違いなくバレエダンサーを観察はしているでしょう。注意深く、情熱と知性を持って。そして真似するのです。彼はどうやって身体の使い方を理解しているのかは分かりません。直感で理解出来ないことが一つあるとすれば、それはクラシックバレエです。それどころか、特定のステップを行うには、筋肉、原動力、姿勢を不自然な方法で使わなければならず、指導者がやり方を説明してくれなければ、どうやるのか絶対に思い浮かばないでしょう。
どうやらユヅには、何をどうやるかを説明し、出来なければどこか間違っているのか教えてくれるバレエの先生はいないようです。
それならどうやっているのでしょうか?
全く訳が分かりません。

しかし、私が揺るぎない確信を持って知っていることが一つあります。
それは偉大なバレエダンサー達がいて、偉大なスケーター達がいて、更にその上に羽生結弦がいるということです。
感動的で、
天才的で、
途方もない彼が・・・

#balleticyuzu #WeLoveYouYuzu #roncapu

アレッサンドラ・モントゥルッキオ
作家、編集者、翻訳家。幼少時よりバレエを学び実践するバレリーナであり、指導も行っている。


『序奏とロンド・カプリチオーソ』が初披露された全日本選手権の演技も見ておきましょう。





まだたったの2回しか滑られていない『序奏とロンド・カプリチオーソ』です。

これで終わりなんて、残念で、悲しすぎます。


22 北京 SP 読売新聞



もし羽生選手が現役続行ならば(引退宣言が無いということは現役続行ですよね?!)、
来シーズンも継続していただけたらと切望しています。



お読みいただきありがとうございました。

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withgoldenwings at 20:56│羽生結弦 
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