2022年03月10日
北京の4Aは最高のジャンプ
『フィギュアスケートLife』のブリアン・ジスランコーチのインタビューには、羽生選手の4A挑戦についての数々のエピソードが明かされていて、羽生選手の4A成功に掛ける強い思いと、ジスランコーチの羽生選手に対する愛情に満ちた気持ちに感動しました。
ジャンプコーチという立場から、ジャンプを正しい技術で跳ぶことの重要さについても詳しく語ってくださっています。
インタビューの一部分を抜粋させていただきました。
僕の親しい知り合いで、中国の主催者側のビデオ係をやっている人から動画が2つ送られてきました。
ちなみに僕は3年ほど前から中国代表選手の練習を見ているので、その人とはずっとお互い連絡を取り合っている仲です。
一つはユヅの北京オリンピックのSPの時の4回転サルコウの動画。もう一つは別の試合の4回転サルコウの動画で、まったく同じカメラアングルでした。
それを比べてみると、前者の4回転サルコウのテイクオフ時に、ユヅの足の動きが少し、ほんの少しだけ上体の動きよりも減速するのが見えるのです。
結弦は非常に綿密に調整されたF1のレースカーに似ています。自分の身体を知り尽くしていて、すべての部分に敏感に反応します。
だからほんのちょっとでもズレがおこると、大きな影響を及ぼしてしまうのです。
僕はユヅから送られてきた送られてきた写真をもう一度見直して、テイクオフで引っかかったと彼が言った穴がどこにあるかを確認しました。
すると動画で見ていて、足が減速する個所と完璧に一致したのです。
SPの冒頭の4Sで穴にはまってしまい、ジャンプが失敗したことに関しては、ハビの見解とかもあり、釈然としないこともありましたが、ジスランコーチはそれとなく、やはりあれは穴にハマったのだということを実証してくれたのだと思いました。
羽生選手には試合で2回そういうことが起こり、一つは日本での試合、もう一つが今回の北京での出来事だったということです。
率直に言うと、今年のユヅルは4Aを着氷させたいという気持ちの方が、オリンピックで優勝したいという気持ちよりも強かった感じでした。
「僕はすでに2度、オリンピックで優勝している。だから勝っても初めて、というわけじゃない。
でも4Aを成功させれば僕が史上初、でしょ? だからそっちに焦点を当てたい」って言うんですよ。
パンデミックが始まってからバーチャルな方法でコーチングをやるようになって、それはそれでよい点もありますけれど、やっぱり実際に対面式でやるのとはまったくわけが違います。
こう言うと変に思われるかもしれませんが、僕は「触るのが好き」なんです(笑)。
スケーターを「手取り足取り」教えるのが僕のやり方です。
なのに、ユヅがよりにもよってジャンプの中で一番難しい4Aを身に付けようとしている時に、僕たちはすべてをバーチャルでやるしかなかったんです。
「触るのが好き」なのに、バーチャル練習しかできなかったというのは、ジスランコーチにとっても、羽生選手にとってもストレスが溜まることもあったと思います。
でも、いつでもジスランコーチに相談できていたのだということが分かり、安心しました。
ユヅの場合は彼から動画が送られてきて、僕がそれを分析して、気が付いた点、直すべきだと思う点を記述式でテクストの返信を送るんです。
そして彼がそれを見て、次の練習で活かす。何かわからない点があればユヅからメッセージが来て、やり取りをすることもあります。
そこで僕が彼に説明したことは、他の4回転はルッツでさえも、たいてい滞空時間が0.57だ、と。
でもそれでは4Aは絶対に跳べない。少なくとも0.80秒は欲しい。0.23秒の差、です。
0.23秒は(滞空時間で言えば)一生分の長さみたいなものですよ。
4Aは他のジャンプよりも回転が増えるわけだから、跳び上がって瞬時に回転し始めないといけない。
でも難しいのは、たいていの場合そうやって早く回転に入ろうとすると、ジャンプの高さが犠牲になる、という点です。高さが足りなくなってしまう。そして回転を増やそうとすると今度は軸がぶれる。
軸が外れたまま降りると氷に叩きつけられて、まるでスクールバスに激突されたみたいな目に遭う。
でも、ユヅと練習するのはとても楽しいです。彼はj分の身体を完全に知り尽くしているんですよ。彼と練習するようになってかれこれ8年目になりますが、僕の言うことをすぐわかってくれる。
0.23秒の差まで計算して出してくれるジスランコーチ。その瞬きする一瞬の時間が4Aの成功に必要なのですね。それは正に「限界への挑戦」という言葉がふさわしいと思いました。
羽生選手が何度も氷に叩きつけられながら、ようやく「立てる」ところまで到達できたことに、心からの賛辞と敬意と愛を捧げたいと思いました。
全日本の1か月半前ですかね。彼から動画がいくつか送られてきました。「Check this out(これ、見てよ)」というメッセージが添えられて。(中略)それで動画を見たら、(4A着氷後)立っていたんです、それまで立ったことがなかったのに。降りたとしても転倒、また転倒、転倒のt連続でした。
もう僕はそこでパ二クりましたよ。冗談抜きで、あの動画を見た時、僕は家の中でぴょんぴょん飛び跳ねました。「Oh my God!立ってるじゃないか!」って。その時からすべてが変わりました。
両足で着氷していました。クリーンではなかったけれど、着氷して、立っていました。
大きな前進ですよ、それでも。
(中略)
というわけで、全日本の最初の練習で最初に跳んだ4A、着氷して立っていましたよね?あれは本当に良いジャンプでした。試合本番で跳んだジャンプよりも良かったと思います。
でも、北京で跳んだジャンプはそれよりさらに良かった。
もちろん、転倒はしましたが、ジャンプに高さがあったし、着氷もいっそう明らかに片足で降りていました。
僕に言わせれば、試合でこれまで誰が跳んだ4Aよりも、あれがぶっちぎりで最高のジャンプでしたね。
4Aとしてコールされたのも良かったです。
回転は明らかに3Aよりも回っていたし、不足分は2分の1というよりも、4分の1に近かった。議論をしようと思えばいくらでもできるけど、とりもなおさず「クワッド・アクセル」なんですからね。
ということで、北京での4Aはこれまでで一番の出来だった、と思います。
(中略)
ジャンプ指導に関して僕が譲れない線は、選手たちに絶対にジャンプをチートしない、という点です。
テイクオフ、空中、ランディングのいずれにおいても妥協しない。
4回転ルッツに関しては、世界でちゃんとできていると僕が思うのは3人だけ。
ボーヤン、ネイサン、そしてユヅル。
ジスランコーチのジャンプ指導がいかに原則に基づいた厳しいものであるか知ることができました。
ボーヤン選手も3年前からジスランコーチにジャンプ指導を受けていたことは初めて知りました。
北京では仲の良い二人の姿が見られましたが、きっと同じコーチに指導を受けているという親近感もあるのかな。
ここまでで、インタビュー全体の約半分です。
続きはできれば明日にでも書きたいと思います。

ジスランコーチ、スマートになって精悍な感じでカッコよいですね。
またいつか羽生選手がクリケットクラブで練習できる日々がありますように。
お読みいただきありがとうございました。
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