国別対抗戦の行方酷すぎませんかSOI

2021年04月02日

2つの炎の狭間で





「惑星ハニューにようこそ」の記事から。

世界選手権の結果を受けた、マッシミリアーノさんの想いが伝わってきます。
お忙しい中いつも素早い翻訳をしてくださるNympheaさん、ありがとうございます。



長文の一部を引用させていただきますが、全文は「惑星ハニューにようこそ」で是非お読みください。


【マッシミリアーノさんのポッドキャストライブ配信より】

Massimiliano Ambesi


マッシミリアーノ・アンべージ(M)伊ユロスポ解説者、ジャーナリスト
フランコ・クルカージ(F)元アイスダンス選手、Sport2uディレクター


M:彼はよりコンプリートで、本当に意味で技術と芸術を融合出来る選手だ。

僕にとって、彼のショートプログラムはこの世界選手権のハイライトだった。
完璧に実施された技術的要素、彼によって語られるストーリー・・・

ロビー・ウィリアムズの「Let me Entertain You」は演じるのが難しい曲だ。
しかし彼は誰にとっても難しいリズムを滑りこなすことが出来る。

僕は彼のショートを見てこう言った。
彼こそ現行の採点システムで最も評価されるべき選手だと。
何故なら全てが網羅されているからだ
技術と芸術の両方におけるエクセレンス

そしてこのプログラムが110-111点を獲得しなかったことは省察すべき案件だと思う。
4ルッツを降りたら、より高難度のジャンプだから自動的に+4か+5が保証され、一方、4トゥループはルッツより難度が低いから+2か+3というのはおかしいだろう?
この採点システムのルールブックにはそんなことは一言も書かれていない。
ルールでは各エレメントを個別に評価し、高いGOEに値する必要要件を満たしていたら高く評価する、と決められている。
GOEにジャンプの難度は関係ない。
例えば僕がイナバウアーからフェンスほどの高さのある2アクセルを跳び、流れるように着氷し、その後もフローを途切れさせることなくトランジションを入れたら、+5以外の評価は考えられない。
ダブルアクセルは簡単だから+5をあげない?
違うだろう!そんなことはルールブックのどこにも書かれていない。
にもかかわず、ジャッジ達によってこのように解釈されている。
これは大問題だ。

羽生のショートプログラムに戻るけど、この演技は最低でも110点に値した。
しかし彼は110点を獲得しなかった。
これは喚起すべき問題だ。

大会を制したネイサン・チェンは前例が僅かしかない圧巻の選手で、優れた曲芸師で極上のジャンパーだが、羽生のようなコンプリートなスケーターではない。

F:勿論だ

M:その彼が、フリープログラムでPCS96点を獲得したことは議論の余地があると僕は思う。
スケーティングの滑らかさ、ブレードの使い方、エッジワークと言う観点からスケーティングの質で明らかに彼より優れている選手がPCS90点止まりなのに。
勿論、誰よりも高難度のジャンプを全て成功させ、ライバルに対して大差を築いたネイサン・チェンが優勝に相応しかったことに変わりはない。
しかし、得点は氷上で披露された内容を反映していなかった。

F:勿論だ

M:もしネイサン・チェンがイタリアの国旗を背負って競技していたらPCSは96点ではなく88点だったと僕は確信している

F:(爆笑)

M:試合には勝っただろうけれど、PCSは96点ではなく、88点だった。
従って、この採点システムはもはや機能していない、ということを理解することに注意を向けなければならない。

(中略)

M:この世界選手権で最も美しく、意義深かった瞬間、記憶に残るプログラムは、と訊かれたら、僕は羽生のショートプログラム、羽生の演技と答える。
多くの意味に溢れるプログラム、驚異的なほど軽やかな滑り、全てにおいて高いクオリティ、リンクでスケートを習う子供達に教えるべきクオリティだ。

僕は一方でこのアスリートにまだ競技に時間を費やす意志があることを願っている。
いや、正直に言うと本当に願っているのかどうか分からない・・・

誰がこのスポーツを牛耳っているのかを見れば、彼はOK、もう十分だと言うことも出来る。
獲るべきものは全て獲ったのだから。
五輪金メダル2個、世界選手権金メダル2個。
8回出場した世界選手権でメダル7個、この快挙を成し遂げたのは戦後、彼を含めて2人だけだ。

F:彼にはもはや全ての名声がある。彼の権利だ。

M:そう、全ての名声。
間違いなく彼は4アクセルを追い求めて現役を続けるだろう。
彼は何が何でも試合で4アクセルを着氷したいと思っている。
しかも綺麗に着氷したい。彼が思い描く方法で。

何年も前に遡らなければならないが、羽生はジュニアグランプリに出場するためにイタリアに来た時から僕達にこう教えてくれている。

ジャンプは愛さなければならない。
リンクの片隅で単独で跳ぶものではない。
ジャンプの前後を装飾し、価値を与えなければならない。

つまり、羽生が目指す4アクセルは価値のある4アクセルだ。
得点面に関してだけではなく、パッケージとして完成されていなければならない。

だから間違いなく、彼はこの4アクセルに集中するだろう。

重要なことだから、これは言っておくが、フリー開始前、彼は喘息の発作を起こした。

F:それは知らなかった、そうだったのか・・・

M:ウォームアップに遅れて到着し、その後も問題があった。
勿論、彼はそんなことは言わないし、その上を行く。
しかし、僕達が見たのはベストの羽生ではない。
3アクセルに苦戦していたことを見れば、そのことに気付く。
身体が反応していないという印象を受けた。

前半がそうだった。いずれにしても後半では 4トゥループ/3トゥループ、4トゥループ/オイラー/3サルコウという高難度エレメントを彼の思い通りに決めて挽回した。
しかし、絶好調に見えた公式練習とは違い、ベストな状態の羽生ではなかった。
規格外の選手である彼でもこういう事が起こることはある。
もし彼が万全なら勝負はもっと面白くなっていただろうし、ショートで築いた点差を考慮すると、完璧に滑っていたら、彼が優勝していただろう。
しかし、「タラレバ」を言っても仕方がない


今後の彼の意向を見よう。
間違いなく試合で4回転アクセルを成功させるまでは引退しないだろう。
僕は幸運にもメラーノで彼を見ることが出来たから実質、彼が滑り始めた頃から彼を追っている。つまり、一目で僕に衝撃を与えたスケーターだ。
あの大会にはブレジナを始め、成長と言う点において彼より進んでいる選手が何人もいたにも拘わらず。

長年彼を追ってきた者としては、「もう十分じゃないか」と言いたい気持ちもある。
しかし、このエレメントを試合で決めて歴史を作りたいというこのアスリートの気持ちは理解できる。
彼は3アクセルを未だかつて見たことがないほど卓越したエレメントに昇華したから、今度は4アクセルを試合で決めた最初の人間になりたいのだ。

だから純粋に超絶技術という観点からは彼が続けてくれることに僕は満足している。

しかし人間的な視点からは、彼のような規格外のチャンピオンが、ノーミスの完璧な演技をしても、ジャッジから過小評価されるのを見るためにリンクに出ていく価値があるのだろうかと自問自答しまう。彼と道で出会ったら敬語を使い、それどころか彼を「貴殿」と呼んで敬わなければならないような連中から過小評価されるのを。

だから僕の気持ちは2つの炎の狭間で揺れている。
僕の心、彼がフィギュアスケートにもたらしたことに対する敬意の気持ちは「もう十分だ」と言っている。
つまり「現役を続け、君の真価が評価されない苦しみをこれ以上味わうのはナンセンスだ」と

その一方で、彼はまだまだ多くのことを与えてくれる、という気持ちもある。

プログラム冒頭で4アクセルを入れ、他の4回転ジャンプも入れたプログラムを完成させるなんて、数年前まで想像も出来なかったことだ。
つまり、彼は重力にも戦いを挑んでいるのだ。
4回転半は驚異的な難度だ。

つまり、これが僕の気持ちだ。
ファンとして、スケート関係者として
だから、この意味で今後何が起こるのか見ていこう。

F:僕はフィギュアスケートを多く見てきたし、実際に内部の人間として多く実践したけれど、君が語った、この4回転アクセルを彼がやりたいように前後に何か入れてパッケージとして完成させるという試みを、僕はイメージすることが出来る。実際にはまだ見ていないけれど。
もし羽生がこの夢を追い続け、実現することが出来たなら(出来れば君の実況で)、フィギュアスケート史のマイルストーンになるだろう。

M:勿論だよ、フランコ。
マイルストーンだ。
しかし彼のようなレベルのスケーター、五輪を二連覇し、この競技を想像を絶するレベルまで引き上げたスケーターは・・・・
今、僕達がリンクで見ているスケーター達は、彼と共に生まれた。
もし、羽生がフィギュアスケートをこのレベルまで引き上げなかったら、僕達はネイサン・チェンも見ていないだろう。

F:同感だ

M:そして、これだけのことを成し遂げたスケーターはジャッジ達に辱められるべきではない。
僕達がストックホルムで見たようなショートプログラムを滑るスケーターは107点を持ち帰るべきではない。
このことが大問題なのだ。
このことが省察すべきことなのだ。

(了)

21 World SP  小海途 3


マッシミリアーノさんが感じていることは、私を含め、ファンの多くの方も感じていることだと思います。

SPの採点のことも、FSでの減点の大きさのことも、他の選手との比較において、点数が常に相対的に低く抑えられていることも、その全てが羽生選手をもうこれ以上フィギュア界に君臨させたくないという、大きな圧力のようで、羽生選手がいくら努力しても、それは報われない努力なのだとしたら、もう十分だ、ここを立ち去ろう、と考えても不思議ではありません。
そして、もしそうしたとしても、いささかも羽生選手の功績と名誉を傷つけるものでもありません。

しかし、もう一つの気持ちは、羽生選手が最高にして(おそらく)最後の目標としている4回転アクセルの成功を見たい、そして彼と共に歓喜の涙を流したいという誘惑に勝つのもまた非常に難しいのです。

怒りの炎と期待の炎、二つの炎の間で揺れているのはマッシミリアーノさんと同じです。

マッシミリアーノさんのスポーツジャーナリストとしての正義感溢れる熱い気持ちにはいつも感動させられます。

2008年にイタリア北部のMeranoで行われたメラーノ杯で初めて羽生結弦を見た時から、彼の真価を見抜き、ずっとその進化を見続けて来てくれたマッシミリアーノさんです。


2008年ジュニアグランプリシリーズ・メラーノ杯


https://youtu.be/x7CRPUoK-ys

この時は5位という結果でしたが、マッシミリアーノさんは強い印象を受けたそうです。
それからずっと羽生選手を高く評価し続けてくれています。


もう一人、このメラーノ杯で結弦くんから強い印象を受けたという人物がいます。

今度の国別対抗戦に出場する予定の、イタリアのダニエル・グラッスル選手です。

メラーノに住むダニエル君はこの時6歳で、地元で開催されたメラーノ杯を見に行って、13歳の結弦くんと出会ったのです。

それ以来、結弦くんに注目して、愛犬には日本語で「KOORI(氷)」と名付けているそうです。
ダニエル君は今ではイタリアチャンピオンシップ3連覇中です。


ダニエル・グラッスル


というわけで、
もし国別対抗戦が無事に開催されたら、羽生選手を応援するのは勿論ですが、
インタビューでも、「憧れの選手は羽生結弦」と言うダニエルくんを応援したいと思っています



最後までお読みいただきありがとうございました。

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withgoldenwings at 15:42│羽生結弦 | 2021 世界選手権
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