二人の友情は永遠にOtonalのジャンプとGOE

2019年11月01日

チェンの心の中に、「羽生に勝つ」という領域はない



大分前の記事になりますが、スケートカナダに夢中になっていてなかなか書く機会が見つけられませんでした。

今夜からのフランス大会の前に取り上げておきたいと思っていたのですが、ギリギリ今日になってしまいました。

フランス大会に出場するネイサン・チェン選手を取り上げています。


「羽生に勝つ領域はない」ネーサン・チェンの勝利の美学


 

ラスベガス=大西史恭


19 ワールド 表彰式 ネイサン記事 朝日



ずっと不思議に思っていたことがある。今年3月にあったフィギュアスケートの世界選手権で勝った男子のネーサン・チェン(米)だ。五輪2連覇を果たした2位の羽生結弦(ANA)に22・45点差をつけて優勝したのに、試合後の取材で「勝ててうれしい」という趣旨の発言はなかったように記憶している。

チェンにとって、「羽生に勝つ」とはどんな意味を持つのか。彼に聞きたくて、4月の世界国別対抗戦で取材を申し込んだが、体調不良のため急きょキャンセルになった。シーズンオフを挟み、大会3連覇を達成したスケートアメリカから一夜明けた20日、朝日新聞の取材に応じてくれた。


単刀直入に聞いた。なぜ「勝った」という表現を使わなかったのか、と。

 「結弦は驚くような選手であり、僕が何をやろうとも、彼が今まで成し遂げてきたことを奪い取ることはできない。彼はもう、このスポーツに自分の地位を確立した。そして、特定の選手に勝ったと口にすることは少し失礼な気がします。
勝敗は自分が決めるものではなく、ジャッジ(審判)が決めたものなので」

 チェンの心の中に「羽生に勝つという領域は存在しない」と表現した。
常に尊敬する対象であり、目標とすべき選手であるという。

 
 しかし、スポーツに勝負はつきものだ。その点について聞くと、チェンは言葉を選んだ。「競技に出ている限り、勝ちたいという気持ちは当然あります。ただ、誰か一人の選手を負かしたいというような気持ちで挑むことは、自分のやりたいことの妨げになる。自分の集中を失わないようにして、できる最高の演技を目指してやっていくように、毎回、試合で心掛けています。

 

 昨季のチェンは世界選手権、グランプリファイナルなど出場したほとんどの大会で優勝した。今季のスケートアメリカは2位に40点差以上をつけて圧勝した。シーズン序盤から絶好調に思えるが、「スポーツは常に変わっています。個人も進化しています。誰かが手の届かないところに永遠にいることはない。一つの試合の結果にとらわれすぎていると、全体の視野を失ってしまう気がします」と、謙虚な姿勢を貫く。

 
 今、何をモチベーションにしているのか。
自分の中では最高の演技をしたいという気持ちがある。完全に納得できるパフォーマンスはまだ、やっていない。どの大会でも、少しずつミスがある。エレメントのレベルを失ったり、予定していたことが全てできなかったり、あるいは音楽にちょっと遅れてしまったり。全てにおいて自分が満足できるという演技は不可能かもしれないけれども、少しでも、それに近づいていけるようにということを目標にしています

ネイサン 記事 朝日 2


 結果的に、チェンは当たり前のように勝ち続けるが、勝つことだけを目指しているわけではないというわけだ。フィギュアスケートの魅力やチェンの勝利への美学だけでなく、点数だけでは表せない羽生の存在感や影響力の大きさを改めて感じた。


最後に、5回転ジャンプについても聞いてみた。新たな大技に挑戦するのか、と問うた。「現在、僕は(5回転に)興味を持っていない。もし、結弦らがマスターして武器として使えるようになってくるのであれば、自分も集中して5回転をマスターしようと努力をするかもしれないけど、今のところ、その必要は特に感じていないです。ただスポーツは常に変わっていくので、ちょっと様子を見ようと思っています」(ラスベガス=大西史恭

https://www.asahi.com/articles/ASMBR2W0XMBRPTQP00D.html?iref=pc_ss_date


(この記事はスケートカナダの前に書かれたものなので、羽生選手がSP、FS、Total全てにおいてシーズンベストを持っている現在の状態は反映していません。)


ネイサン選手がどういう英語の言い回しで語ったのか、原文がないので分かりませんが、彼の心の中に「羽生に勝つという領域は存在しない」というのは、羽生選手と戦って、結果として出された点数で勝ち負けを決めようという気持ちは持っていないということだと私は理解しました。

試合である限り、点数は出る。しかしそれはジャッジやレフェリーという人たちの判断の総合であって、自分の中から生まれ出る本当に「勝った」という確信ではない。
たとえジャッジから勝利を与えられたとしても、自分の心の中には「羽生に勝つという領域(概念)は存在しない」ということかなと思います。


本当に自分が最高の演技をしたという確信が持てた時、ネイサン・チェン選手もまた、
「勝ったーーー」と叫べるのだろうと思います。

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ネイサン選手はアエラ10月21日号の記事の中でもこのように述べています。





「もちろん羽生結弦はここ数年、僕にとって一番影響がある選手です。結弦がいるから僕がここまで頑張ってこられたのです。結弦の演技は、信じられないようなパワーを生み出します。それは『結弦のスケート』が確立されているからですね。僕も結弦のように『僕だけのスケート』という境地に達したいです」

10月12日の過去記事 より



明日11月2日発売のアエラにも大西さんの記事が掲載されるようです。



●羽生結弦選手のスケートカナダも詳細ルポ
スケートカナダで自己最高の「322.59」をたたき出し優勝した羽生結弦選手の活躍も、
大判の写真と詳細なルポでお伝えします。


羽生結弦選手のスケートカナダの詳細ルポも、カラーの写真とともに掲載。衣装の内側にある鍛え上げられた筋肉、1本1本コントロールされた指先までを写し取った一枚には、羽生選手の気迫も映っています。執筆は、朝日新聞スポーツ部のフィギュア担当、大西史恭記者です。



今夜から始まるフランス大会ではネイサン・チェン選手の演技や点数と羽生選手を比べて、またまた煽るような記事や報道が出てくる可能性もありますが、二人のトップスケーターが、それぞれの「自分のスケート」を追求していく様を見られることに感謝して、雑音に惑わされないようにしたいと思っています。

私はスケートカナダの羽生選手を見て、もうすっかり満足と安心の中にいるので、このフランス大会は楽な気持ちでテレビ観戦ができるなあと思っています。

今夜が楽しみです。




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